クルム伊達公子が、2年ぶりに日本代表に帰って来た。

 女子テニス国別対抗戦フェドカップのワールドグループII・1回戦、日本 vs. スロベニアで、村上武資監督からの要望で再招集された41歳のクルム伊達。代表として日本のコートに立つのは、1996年7月のワールドグループ準決勝、アメリカ戦以来(2010年は2戦ともアウェー)、実に15年7カ月ぶりとなった。

 スロベニアは、クルム伊達が14年ぶりに代表復帰した2010年に対戦して敗れているため、「何とかリベンジをしたい」と試合前に語っていた相手。

 今回、WTAランキング81位(大会時)のクルム伊達は、第1シングルス(チームのエース)の座を51位の森田あゆみに譲り、第2シングルスとして出場した。

「昨年はチームに参加することはなかったが、苦しくてタフなアジア予選を勝ち抜いてきた勢いを止めないように、自分の役割を果たしたい。ナンバー2の役割も非常に大切だと思う。第1試合で、日本に勢いをつけたい」

 オープニングマッチに登場したクルム伊達は、2年前はストレートで勝利したスロベニアのエース、ポロナ・ヘルツォグと再び対戦。その時の結果は「あまり参考にならない」と試合前に語っていたとおり、ヘルツォグに第1セットを先取される苦しい立ち上がりとなった。

 この日は、寒さもクルム伊達にとって敵だった。会場となったブルボンビーンズドーム(兵庫県)には暖房設備がないため、コート上でも気温は10度以下。コートサイドにヒーターが持ち込まれたものの、会場内を十分に温めることはできなかった。

「普段からするとあり得ないぐらい着込んだ(笑)。もともと寒がりで冷え性。私にとってはかなり苦痛の時間でした」

 クルム伊達は、シャツを3枚着込んだうえに、ロングスパッツも着用してプレイしたが、第1セットでは流れをつかみきれないままでいた。

 さらに、試合前に考えていたヘルツォグのフォアサイドにボールを集める戦術が機能しなかった。そこでクルム伊達は、直線的な弾道を描くカウンターショットを生かして、相手のバックサイドへ打つ戦術に変更。こうした作戦変更はテニスで“プランB”と言われるが、それを試合中にすぐに遂行できるあたりは、経験豊富なベテランならではだ。また、第2セット第9ゲームでサービスブレークに成功すると、ヘルツォグの集中力が落ちたのを見逃さず、そこから一気にギアを上げて逆転勝ちに成功した。

「フラットなボールが速く飛んで来て、ボールのバウンドが低く、プレイしづらかった。リターンもすごく良かった。公子は経験豊富な選手だ」

 21歳のヘルツォグは脱帽せざるを得なかった。クルム伊達の勝負どころでの粘りと切り替えのうまさは、41歳になった今でもまったく衰えていない。

「先に1勝を挙げれば、チームのモチベーションを上げることができる。ナンバー2の役割は果たせたと思う」

 このクルム伊達の1勝をきっかけに、続くエースの森田が「伊達さんが相手のナンバー1に勝ってくれたので、何としてでも勝ちたい試合だった」と奮起。初日と翌日の2試合で2勝を挙げて日本の勝利を確定させると、最終的には5戦全勝で日本がワールドグループIプレイオフ進出を決めた。村上監督は「今回のキーは、第1試合の大逆転だったと思います。その流れを、森田が引き継いでくれた」と勝因を挙げた。

 今回、20歳で日本代表シングルスデビューを飾り、初戦を勝利で飾った奈良くるみも、「一緒に練習したり、チームとして1週間一緒に生活したりする中で、伊達さんと森田さんのプレイを見て、近いうちに自分も勝負のかかるシングルスに出たいと思った」と決意を新たにしていた。

 クルム伊達が若手選手に示したテニスへの真摯な姿勢やプレイは、21歳の森田がしっかりバトンを受け継ぎ、最年少の奈良にも波及したのだ。

 実は、村上監督から再び声をかけられた時、クルム伊達には「2011年にアジアからワールドグループIIへ勝ち上がった若手中心のメンバーで戦った方がいいのではないか」というためらいがあった。しかし、話し合いを重ねる中で、もう一度フェドカップを戦う気持ちに傾き、代表復帰を決めたのだった。

「2年前よりチーム力も個々の力も上がって非常にいい状態だと思う。強い日本女子テニス界をもう一度。ワールドグループで戦えるチームになれるように、自分の力でできることがあるのなら、また一員として、みんなと一緒に戦いたい」

 世界上位8カ国で構成されるワールドグループIへの07年以来となる昇格を果たすため、今また、クルム伊達の経験が日本の女子テニス界に必要とされている。

※ワールドグループIプレイオフは、4月21、22日に行われる予定


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