1990年代前半、カウンター頼みの退屈なサッカーと批判されていたプレミアリーグ所属のアーセナル。そんなアーセナルに、ショートパスの概念を導入し、短く速いパスワーク中心の魅力的なチームに変えたのがアーセン・ベンゲル監督です。J1名古屋の指揮をとったこともある、日本では馴染みのある名将です。

 ベンゲル監督は練習に「ラダー(はしご)・トレーニング」というものを取り入れるそう。これは、芝の上にはしごを横に倒して置いて、そこにあるマス目の上を小まめにステップを踏み、駆け抜けるというトレーニング。短い感覚のステップを体に覚えさせ、テンポのいいサッカーを実現させるのです。華やかなパスサッカーの裏側には、こういった地道なトレーニングの積み重ねがあるようです。

 そんな、「ラダー・トレーニング」を文章の鍛錬にも活用しているというのが、本屋大賞にノミネートされた『偉大なる、しゅららぼん』の著者・万城目学氏。テンポのいい文章を書きたいために、執筆前にイメージに近いテンポの文章を読んだりするそうです。『偉大なる、しゅららぼん』についても、「出来上がりはきれいに仕上がっているように見えると思う」と自信をみせます。

 また、「何も考えていない若い頃は臆せずゴール前に飛び込んでいけたけれど、年をとると前後のバランスとかを考えて攻撃的になれなくなる」とサッカーに例え、今回の作品では、あえて初心の頃の自分を取り込んでみたそうです。

 「ちょうどデビューから五年、今までは上手くなりたいと思って書いてきたけれど、そろそろ失くしてしまったものを振り返る時期が来ているんじゃないかと。今まではきっちり緻密に物語を作ってきたんですが、今回は文章にしても構成にしてもちょっと荒っぽく、そんなにきちきち決めずにやってみようと思った。下手くそだった頃の自分ができたことをやってみたい。漠然としているんですが、そういう思いが強かったですね」(万城目氏)


 ──琵琶湖畔の街・石走に代々住み続ける日出家と棗家の両家には、受け継がれてきた特別な「力」がありました。石走高校に入学した日出涼介、日出淡十郎、棗広海が偶然同じクラスになった時に、力で力を洗う戦いの幕が上がる。

 短くてテンポのよい文章で描かれた万城目ワールド。全国の書店員からも絶賛の声が絶えない作品です。



『アーセナルのサッカーを文章に取り込んだ、本屋大賞候補作『偉大なる、しゅららぼん』』
 著者:
 出版社:集英社
 >>元の記事を見る





■ 関連記事
『台本? 演技? プロレスに関する素朴な疑問あれこれ』(2012年1月31日09:00)
『お笑い芸人コンビに隠された「途中で投げ出さない方法」』(2012年1月30日15:00)
『週刊文春で連載中の『人生モグラたたき!』が単行本化−アダ名、盆栽、初音ミクなど65のテーマを収録』(2012年1月30日10:00)


■配信元
WEB本の雑誌