テニスの4大大会の一つ「全豪オープン」で、日本人選手として80年ぶりとなるベスト8に躍進した錦織圭。決して恵まれた体格とは言えないこの若きエースは、いかにして大舞台へとのし上がってきたのか。「育ての親」が知られざる、そして意外な育成秘話を語り尽くした!
「圭には、まだまだ伸びしろがあります。体を大事にしながら鍛え上げていけば、3年後には『世界のトップ』に立つ選手になっているはずです」

 力強くこう語るのは、

「プレーヤーとしての才能は14歳までで決まる」と言われるテニス界において、錦織圭(22)を12歳の時から3年間にわたって指導した「育ての親」、チームヨネザワ代表のテニスコーチ・米沢徹氏だ。米沢氏は日本テニス協会のナショナルコーチ時代に錦織と出会い、公私を共にすることになった。

 今回の全豪オープンで、錦織はこれまでにない称賛の声を、国内外から集めた。もちろん、「8強入り」という大快挙がその理由である。テニス専門誌記者が話す。

「テニスは技術はもちろん、身体能力や体の大きさがダイレクトに反映される。その壁は厚く、過去の歴史でもわかります。日本男子の4大大会(全豪オープン、全仏オープン、全英オープン、全米オープン)8強入りは95年、松岡修造氏のウィンブルドン(全英)にまで遡り、全豪にいたっては、32年以来80年ぶり。大会4勝は日本男子史上初で、世界ランクも史上最高位の20位になります」

 まさに日本テニス界の歴史を塗り替える「伝説」の誕生である。米沢氏はまず、錦織の代名詞たる「エア・ケイ」について説明する。

「ボールの上がり際を、ジャンピングフォアハンドで捉える圭の必殺技ですが、この予想外でトリッキーなプレーに、相手選手はタイミングを外されてしまいます。この技が生まれたのは、13歳の時。当時の圭は身長が150センチほどしかなく、高い球を強く打ち返すことができませんでした。そこで、高くジャンプして打つようにアドバイスしました。その数カ月後、『高いボールを打ち返すだけではなく、武器として打ち込むようにしよう!』と、その課題への取り組みが始まりました。それを圭は自分の技として磨いていった。まさに、短所が生んだ長所です」

 身体能力という視点ではどうなのか。今大会前に錦織は、ハンマー投げの室伏広治を指導する理学療法士、ロバート・オオハシ氏に師事し、10日間もラケットを握らず、体幹トレーニングを積んだという。

「外国人選手に比べると、日本人選手は身長もリーチも体重も、どうしても劣ってしまう。圭はそのハンディをその他の面でカバーしながら、トップ30〜40位に位置してきました。ところが、今大会ではかつてないほど、見た目にもわかるほどに筋肉量を増やし、体力を向上させています。09〜10年は、右肘の故障で1年間プレーできませんでしたが、きっちりとしたトレーニングと食事で体を作ったことで、これだけ伸びています。しかもまだ完成形ではないので、この3年の過ごし方で体をもっと強くできると思います」