4月には自動的に「脱原発」となる日本、本会議中に「口利き」をするトンデモ代議士 【文春vs新潮 vol.28】

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[文春] 巻頭グラビアは「脱原発へのカウントダウン」という記事。「菅直人前首相による浜岡原発停止要請から9カ月。原発は定期検査により次々と停止し、自動的に『脱原発』が実現するまで3カ月を切った。その先に待つのはバラ色の未来か茨の道か。われわれは今、岐路に立っている−」とリードに書かれているが、全くそのとおりであろう。

稼働中の原発は3基。福井県の高浜原発3号機は今月中に定期検査となる。3月には新潟県の柏崎刈羽原発6号機が、つづいて4月には北海道の泊原発3号機が定期検査に入る。これで日本にある54基の原発のすべてが停止することになる。この流れで「脱原発」が実現すると、いったいどうなるのだろう。

まず、原発に代替する発電手段を確保する必要がある。記事では、専門家のコメントとして「原子力発電の代替は火力発電が主」であり、石油や天然ガスなどの燃料を輸入するためのコストは増えるようだ。単純に考えれば、そのコストと原発を維持・稼働した場合のコストの差額が、電気料金の値上げ、もしくは値下げとなってあらわれることになる。

とはいえ、福島第1原発の事故から私たちが学んだことは、原発事故のリスクはマイナスの意味でプライスレスだという点であった。くわえて、原発推進を黙認し、原発が発電した電気をほぼ無意識に享受してきたことに対する「反省」からいえば、「脱原発」のためなら多少の値上げもいとわない姿勢が必要なのかもしれない。

一方、原発が立地する地域には、「脱原発」によって大きな問題が発生する。第一に、補助金という「毒まんじゅう」を喰らい、それに依存せざるをえなくなっている地域をどうするのか。第二に、原発関連に従事している人たちの仕事をどうするのか。この二点である。毒まんじゅうは、提供するほうが悪い。よって、補助金に対する依存については政府が責任を持って対処すべきだ。また、現場で働く人々に対する保障にも政府が対応する必要がある。


福島で被ばくした人々や避難を余儀なくさせられた人々に対する保障もままならないなかで、原発が立地する地域のことや原発で働く人々の保障問題にまで手がまわらない、と政府は言うかもしれない。だが、「脱原発」という道を選ぶのならば、それらを同時進行で対処するのは政府の宿命であり、原発を黙認してきた私たちはそのことに税金を使われても文句がいえる立場ではないと思う。

[新潮] こちらも巻頭グラビアの記事で、「自民党幹部の本会議中『口利き』」。1月27日の衆議院本会議において、自民党の逢沢一郎代議士がFAXを見ながら携帯電話で文字を打っている写真が掲載されている。「議場での携帯電話の使用は厳禁」であるのはもちろんだが、逢沢さんがやっていることは、さらにとんでもないことだった。

記事によると、FAXには「逢沢氏の地元、岡山市内の住所とともに個人の氏名と生年月日、そして市役所のとある部署が記されて」おり、「どうやら人事の“口利き”のよう」だというのである。ようは「市職の人事に代議士が介入する様」なのであった。

正直言って、代議士の「口利き」など、こうして取り上げること自体がナンセンスに思えるくらい当たり前に行われていることなのであろう。それがいいとは言わないが、選挙で当選してなんぼの代議士にしてみれば、必要不可欠な「内職」のひとつなのではないかと筆者は見ている。

問題なのは、それを衆議院本会議の最中に行い、しっかりとマスコミのカメラマンに撮影されてしまっていることだ。もっとコソコソとやっていれば、「内職」の範囲で理解されたであろう。「口利き」ではないが、「コネ採用」を明言した岩波書店もそんなことは昔からやっていたのだから、そのままコソコソとやり続けていればいいじゃないか、と思うのだが。

[文春・新潮] 今号は、かぶりネタが多い。まず「大地震」ネタ。文春は「M8M9大地震 最悪の1週間はこうなる!」、新潮は「『東京直下型大地震』死中の活」で、いずれも特集扱いの記事だ。新潮によれば、東大地震研究所研究チームの試算が「東京直下型地震が4年以内に起こる可能性を『70%』と弾き出した」のだという。以下、文春も新潮も首都圏の建物の脆弱さを取り上げ、富士山の噴火について触れている。

この大地震のネタにしろ、年末に地球が突入するとささやかれている「フォトン・ベルト」のネタにしろ、いくらそれらに備えていても、起きてしまったら私たち個々人は太刀打ちできない現象だと思う。コンピュータの「2000年問題」もそうであったが、「まあ、そういうことがあるかもしれない」という程度に意識していればいいのでは。

筆者は、内戦中のカンボジアで暮らした経験を持つが、そこで学んだことはこうである。すなわち、危機的状況に陥ったときにもっとも重要なことは、どれだけ冷静な判断力を保てるか、ということ。天災や戦災など、個人の力がおよばない事態に巻き込まれたときに、オタオタしたり焦ったりすることこそが被害を拡大することにつながるのだと思う。

まあ、危機を煽れば週刊誌は儲かるのだから、両誌のように大地震を大げさに報じることは致し方ない。あとは、読む側のリテラシーがものを言う、といったところか。

もうひとつのかぶりネタは、北の湖親方が日本相撲協会の理事長に返り咲いたことである。2008年には弟子の不祥事により、理事長から理事に降格。翌年にも弟子の不祥事があり、理事から役員待遇に降格。そんな人物が、再び理事長になってしまうなんて……。こうした人事に対して、新潮は「角界に自浄作用はない」と言い切っているが、巷の相撲ファンである筆者であってもそう思ってしまう。

[その他] 「『SGIの日』に脱原発を提言した『池田大作』に疑問符」という記事で、新潮がお得意の学会批判を展開している。池田さん、原発推進だったのになぜ急に脱原発を言いだしたの、という内容だ。文春は「宮根誠司と母が信奉する『ナゾの霊感商法』」という記事で、宮根さんと「エヌ社」なる風水&霊感商法との関わりを臭わせている。だが、エヌ社と関わっているのは宮根さんの母親であり、宮根さん自身との関わりはぼやかしている。親族の情報まで事細かにチェックされるなんて、芸能人っていうのは覚悟がなければやってられないなぁ、とつくづく思った。

さて、今週の軍配は新潮に。

【これまでの取り組み結果】

文春:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

新潮:☆☆☆☆☆☆



(谷川 茂)