今年1月初めにシリーズ2冊の累計発行部数が103万部となった『ビブリア古書堂の事件帖』。創刊3年目のメディアワークス文庫では初の100万部超え。今回、第一弾(「栞子さんと奇妙な客人たち」)が文庫本初の「本屋大賞2012」候補作となったことで、再び注目されています。

 古書店を営む篠川栞子は、20代半ばの口下手で上がり症の美人。本のことを語るときだけ人が変わったように雄弁になります。対して、訳あって栞子の店で働くことになった五浦大輔は、祖母とのある出来事から、本が読めない体質になった23歳。彼の口を通して、この本屋にやってくるユニークな面々と彼らがもたらす事件が語られます。謎解きをするのは店主の栞子です。

 本作でモチーフになるのは、夏目漱石『漱石全集・新書版』、小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』、ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』、太宰治『晩年』の4冊。相当の本好きでないと知らない作品も盛り込まれていますが、それを知っているかどうかは読者にとってはそれほど大きな問題ではありません。知らなくても十分楽しめます。

 著者の三上延氏は、あとがきで「知らない駅で降りて、少し時間があると、古本屋を探す習慣があります」と言っています。「新刊の本にはない、古本の独特の雰囲気が好きです。人の手を経るうちに、目に見えない薄い膜をまとっていったような―」とも。読後、作者のその思いを読者は同じように体験したと感じるでしょう。

 書店員が選ぶ本屋大賞で、本そのものと、本が呼び起こした事件を題材にする楽しい小説がノミネートされないわけがありません。本屋さんの心に響くエピソードや小ネタも載っていて、書店員のみならず、読者にとっても興味深いもの。また、栞子と自分を重ね合わせる本屋さんも多いのかもしれません。

 表紙や挿入されているイラストからライトノベルのような雰囲気もありますが、ラノベを楽しむ層にも、そうでない層にも幅広く支持を集めているからこそ、人気作になっているのでしょう。

 昨年売れに売れた『謎解きはディナーのあとで』にも似た趣があり、"本屋大賞からドラマ化へ"の流れをたどる作品になるかも。今春、シリーズ第三作が発表される予定です。



『文庫で初の「本屋大賞」候補『ビブリア古書堂の事件帖』が売れる理由』
 著者:
 出版社:アスキーメディアワークス
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