プロ野球のセリーグが公式戦全試合を対象に予告先発制度の導入を検討していることが明らかになった。3月1日の理事会で協議し、決まれば今季から実施する。

 理事長を務める中日ドラゴンズ佐藤良平球団代表は、「まだ意見交換のレベル」としているが、複数の球団が前向きで、東京ヤクルトスワローズ新純生球団常務も「うちは反対はしない」と語った。

 読んで字のごとく、先発登板予定の投手を試合開始前に発表する予告先発制度。パリーグでは、1985年から公式戦で毎週日曜日の試合を対象に、ファンの関心を高めてもらうことを目的に企画され、今ではリーグ公式戦全試合で採用されている。セリーグでは1994年、日曜日の全試合、読売ジャイアンツ広島東洋カープの全試合に限って実施しただけだ。

 そんな予告先発制度だが、球界でも賛否両論が分かれる。東北楽天ゴールデンイーグルス野村克也元監督、ドラゴンズの落合博満前監督などは否定派で、「予告先発は相手に手の内をばらすもの」、「相手チームの先発投手を予想してオーダーを組むのも、戦略の一つ」、「先発投手を予想するのも、ファンの楽しみの一つ」と主張している。
 方や1998年から2008年まで阪神タイガースで指揮を執ったオリックスバファローズ岡田彰布監督は、予告先発制度を支持している。

 世界的に見れば、予告先発制度の採用は主流だ。米韓台のプロ野球界で導入されており、メジャーリーグ、韓国プロ野球界にいたっては、対戦カードごと、3、4試合まとめて先発登板予定の投手が予め発表される。
 メジャーリーグでは、指名打者制度を巡りアメリカン・ナショナルリーグのファンの間で意見が分かれているのに、予告先発制度は両リーグ共通なのだから、この制度はあって当然なのだろう。

 なぜメジャーリーグで予告先発制度が採用されているのか。残念ながら、その答えは手元にない。推測するに、わが国のパリーグのように、ファンサービスの狙いもさることながら、予め相手に手の内をある程度明かし、正々堂々と真っ向から戦うという意味合いもあるのではなかろうか。
 以前も紹介したように、メジャーリーグの不文律は西部開拓時代のガンマンの決闘よろしく、潔い真っ向勝負が是とされている。決闘で卑怯な行いをすれば周りから袋叩きにあうし、正当な理由なく予告した投手以外の投手を先発に起用すれば、「Remember Pearl Harbor」のようなことになるのだろう。

 個人的には、予告先発には賛成も反対もない。おそらく、ボクを含むパリーグファンの多くが、今やあって当たり前。制度を採用していないセパ交流戦で違和感を覚えるぐらいで、予告先発制度の是非をあまり考えたことがないのではなかろうか。

 先発投手のローテーションが確立され、先発・中継の分業制が定着した今日、先発投手が連投したり、いつもはブルペンで戦局を見守る中継投手が先発マウンドに上がるケースはほとんどない西鉄ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)の稲尾和久が連投し、「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれた1957年の日本シリーズはとうの昔。セリーグでは今や、マスコミだけではなく、ファンもその日の先発投手を簡単に予想できる。

 ジャイアンツが今年、7月25日の水曜日に東京ドームで行われる対横浜DeNAベイスターズ戦を午後7時に開始することは以前紹介したが(http://blog.livedoor.jp/yuill/archives/51645154.html)、この予告先発制度も、とりあえずやってみればいい。それで駄目だったら、また見直せばいいだけだ。