『容疑者Xの献身』が文学界のアカデミー賞ともいわれるエドガー賞にノミネートされました。物理学者・湯川学准教授が活躍する「ガリレオ」シリーズ第3弾となる本作品は、2005年に発売されるやいなや国内の各ミステリベスト1を総なめにし、翌年の直木賞を受賞。そんな国内では折り紙つきの本作が、今回の世界の権威ある賞の候補となったことで、"ガリレオ"人気は世界でも旋風するのか、いま最注目されています。

 物語の発端となるのは、元ホステスの靖子が、中学生の娘とともに、しつこくたかりに来る前夫を絞殺してしまったという、犯人が明白な殺人事件。そこに一人の天才数学者が関わってくることで謎が生まれてきます。

 靖子の隣人である高校教師の石神は、二人が犯した殺人を知り、この母娘を助けたいという思いから、警察の目を欺く、完璧ともいえるストーリーを練り上げます。一方、湯川は、旧知の草薙刑事が追う殺人事件に、大学の同窓生である石神が関与していることを知り、事件の真相に興味を持ち始めますが......。

 本作は、天才物理学者である湯川と、天才数学者である石神の対決が軸になっています。一方は、論理的思考を駆使し、飄々と物事にあたる天才物理学者、ガリレオこと湯川。もう一方は天才数学者でありながら、不本意にも高校の数学教師となり、冴えない生活を送る容疑者Xこと石神。共に天才的頭脳を持ちながら、湯川は陽として、石神は陰として、その能力を発揮する運命を辿ってしまうのです。

 対照的なキャラクターでありながら、どちらも人間に対する洞察力を持ち、論理的な思考をする。湯川は徐々に石神の施したアリバイの真相に近づいていきます。しかし、真相を明らかにするということは、その才能をリスペクトしている親友の石神を追い詰めることでもあります。果たして真相を明らかにすることに意味があるのか、初めて湯川は苦悩します。

 そして終盤、怒涛のごとく、二転三転と真相が明らかにされていきます。真相から見えてくる心情の深さに、読者は成すすべもなく驚き、感動させられるしかありません。

 事件を数学の問題になぞらえ、論理的に小気味よく紐解きながら、クライマックスで事件の背景にある人間の情がドーッとあふれ出す......、その絶妙なバランス感。ここにアメリカ人も納得の、この作品の奥深い魅力があるのではないでしょうか。



『エドガー賞受賞なるか!? 東野圭吾『容疑者Xの献身』の世界的な魅力とは?』
 著者:
 出版社:文藝春秋
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