2012年01月28日07時12分
〔記録〕楽天イーグルスでボール球に手を出さない好打者といえば?──嶋基宏2011年ボールゾーン・スイング率
映画「マネーボール」の公開が迫っている中、久しぶりに原作を読み返していた。
その中に出てきた、とある数字がぼくの関心を強烈に惹きつけた。
打者がボール球に対してどれくらいの頻度で手を出してしまっているのか?を確認するボールゾーン・スイング率だ。
アスレチックスは、相手ピッチャーがどんな球をどこに投げたかすべて記録している。それをもとに、各打者がボール球にどのくらいの割合で手を出しているかを計算するのだ(マネーボールより)
幸いにも2011年ぼくもイーグルスの打者に対して相手投手がどんな球をどこに投げたかメモを取っていた。それをもとに楽天の主要打者のボールゾーン・スイング率を調べてみよう!そう思い立ったのが昨年秋のことである。
ここまで調べてきた選手は、ルイーズ、ガルシア、岩村明憲、松井稼頭央、内村賢介、草野大輔、高須洋介、横川史学、聖澤諒、中村真人、牧田明久、山崎武司、銀次.......
そして、今回ようやく選手会長の嶋基宏にスポットを当てて、この数カ月に及んだ探求の旅に終止符を打ちたい。

まずは、選球眼を確認する下記表をチェック。

2010年は打率.315でパリーグ打率ランキング8位に名を連ねた嶋も、大変な年になった2011年は打率を約1割下げて.224で終えた。一言で言ってしまえば、打撃低迷に苦しんでしまったシーズンになったという印象だが、上記表で確認するかぎりの選球眼はどうだったのだろう?
まずは、1打席当たり相手投手に投げさせる平均球数を診るP/PA。これは前年4.16に対し昨年は4.15とほぼ変わらず。
イーグルスの中で2年連続で相手投手に「より多く」球を投げさせていたと言える。
2番適性は大いにある嶋基宏
例えば、3.34を記録した早打ちの代表格の牧田と比較してみる。1打席当たり0.81球の差が生じる。100打席換算だと81球、規定打席ぎりぎり447打席換算だと実に362球の違いが出てくるのだ。投手のパフォーマンスや肩は消耗品という立場に立つならば、バントや右打ち等の小技がしっかりでき、かつ、相手に多くの球を投げさせる嶋には、つなぎという意味での2番打者の素質は十分なのだ。2010年ブラウン監督の下、18試合で2番スタメン起用された例があったが、これはあながち間違っていたものではなく、一理ある采配だったと改めて思う。
次に、安打以外の出塁率を診るIsoDと、四球や三振の発生頻度を診る「打席÷四球」「打席÷三振」だ。IsoDは前年とほぼ変わらず。リーグ平均が前年より悪化したため、逆に昨年のほうが良かったと言える。一方、「打席÷四球」「打席÷三振」でいずれも悪化している。
しかし、個人的には、あまり心配していない。三振はともかく、四球の獲得頻度が悪化したのは、運による要素も強いと思うからだ。
昨年も四球はしっかり勝ち取っていた
四球には3つ種類がある。0ストライクの四球(ストレートの四球)、1ストライクからの四球、そして2ストライク(フルカウント)の四球だ。打者側からみて最も価値ある四球はフルカウントからの四球である。0ストライク、1ストライクには投手の責任が大きく入り込んでくるが、フルカウントからの四球は打者が勝ち取った要素が強い。
下記表は、各打者がフルカウントで獲得した四球の数と、発生頻度「打席÷フルカウント四球」を調べたものになる。昨年パリーグIsoDランキング上位6名も参考までに掲載した。
■2011年 打者別 フルカウントからの四球数と発生頻度

嶋はフルカウントからの四球を19個獲得、発生頻度では22.16打席に1個、3-2から四球を得ていた。これは山崎の23個、17.48に次ぐチーム2位の好数字になっている。山崎は長距離打者のためこのくらいの数字になるのはイメージできるが、嶋は長打はない軽打タイプの打者なのだ。打率3割を記録した2010年の「打席÷フルカウント四球」を確認してみると、485打席÷20個=24.25、となった。打者側が選び取った要素が強いフルカウント四球の獲得頻度は、2010年より2011年のほうが多かったと言える。
以上の点が、僕があまり心配していないと思う最大の理由なのだ。
ただ、内村同様、嶋はもっとできる!と思っている。もっともっと四球を多く選んで出塁することができる、その素質をもっていると思う。チーム内では良く出塁していたと言えそうだが、パリーグのIsoDランキング上位者と比べると、物足りない。もっともっと追い込まれた状況から、粘ってフルカウントに持ち込み、四球を選んでほしい!と思っている。
さて、本題のボールゾーン・スイング率をみてみよう。
■全体:16.6%

嶋基宏のボールゾーン・スイング率は、16.6%。これはチーム内で高須に続く好成績だ。
ボール球にはなかなか手を出さない好バッター
といえる。ストライクゾーンとボールゾーンの境目のクサイところ投げて、打ち損じを狙う相手投手からしてみれば、きわどいボール球は見送られボールカウントが増え、ひいては球数がかさんでしまう。相手からしてみれば嫌な存在だろう。
●ボールゾーン・スイング率〔全体〕
・ルイーズ・・・36.3%
・牧田明久・・・28.0%
・聖澤諒・・・26.4%
・松井稼頭央〔左打席〕・・・25.5%
・銀次・・・25.3%
・ガルシア・・・24.8%
・山崎武司・・・24.8%
・松井稼頭央〔右打席〕・・・23.9%
・内村賢介〔左打席〕・・・23.1%
・中村真人・・・22.2%
・鉄平・・・21.7%
・横川史学・・・19.4%
・岩村明憲・・・19.1%
・草野大輔・・・17.2%
・内村賢介〔右打席〕・・・16.6%
・嶋基宏・・・16.6%
・高須洋介・・・16.0%
ボールゾーンの高低別でみると、高めボール球には多く手を出しがちな傾向にあるものの、低めボール球にはなかなか手を出さない傾向が確認できる。低めボールゾーン・スイング率は下記選手内で最も低い15.8%を記録した。
●高めボールゾーンのスイング率
・ガルシア・・・42.7%
・牧田明久・・・30.6%
・聖澤諒・・・30.5%
・嶋基宏・・・26.2%
・鉄平・・・24.0%
・横川史学・・・23.8%
・岩村明憲・・・23.8%
・銀次・・・23.1%
・中村真人・・・22.7%
・高須洋介・・・19.6%
・内村賢介〔左打席〕・・・19.0%
・山崎武司・・・18.2%
・松井稼頭央〔左打席〕17.1%
・草野大輔・・・16.6%
・ルイーズ・・・14.8%
・松井稼頭央〔右打席〕13.5%
・内村賢介〔右打席〕・・・4.9%
●低めボールゾーンのスイング率
・ルイーズ・・・52.0%
・松井稼頭央〔右打席〕37.3%
・松井稼頭央〔左打席〕36.2%
・内村賢介〔左打席〕・・・29.7%
・山崎武司・・・29.2%
・牧田明久・・・28.0%
・中村真人・・・27.7%
・聖澤諒・・・27.1%
・岩村明憲・・・23.8%
・内村賢介〔右打席〕・・・23.5%
・銀次・・・23.4%
・ガルシア・・・21.4%
・鉄平・・・21.3%
・草野大輔・・・20.7%
・高須洋介・・・18.0%
・横川史学・・・18.8%
・嶋基宏・・・15.8%
次に、ボール球に手を出しにいったとき、バットに球が当たったコンタクト率をみてみる。ここでも嶋は高い数値を叩き出していた。69.8%は悪球打ちの中村に続くパーセンテージで、よしんばボール球に手を出してしまっても、空振りすることは少ないと言えるのだ。これも、打者・嶋基宏を特徴づけるデータだろう。
●ボールゾーン・コンタクト率
・中村真人・・・72.8%
・嶋基宏・・・69.8%
・内村賢介〔右打席〕・・・66.7%
・内村賢介〔左打席〕・・・66.0%
・草野大輔・・・64.6%
・銀次・・・63.6%
・鉄平・・・63.5%
・高須洋介・・・60.5%
・聖澤諒・・・58.4%
・松井稼頭央〔右打席〕・・・55.2%
・牧田明久・・・54.4%
・松井稼頭央〔左打席〕・・・53.1%
・岩村明憲・・・47.2%
・ガルシア・・・40.5%
・横川史学・・・32.3%
・山崎武司・・・30.7%
・ルイーズ・・・20.4%
■2ストライク以降:29.5%

追い込まれてからもボール球に手を出さない
2ストライク以降、追いこまれてからのボールゾーン・スイング率も低いパーセンテージを残した。
●2ストライク以降のボールゾーン・スイング率とボールゾーン・コンタクト率
・銀次・・・スイング率55.6%、コンタクト率53.3%
・ルイーズ・・・スイング率47.0%、コンタクト率31.9%
・聖澤諒・・・スイング率46.7%、コンタクト率・・・現在調査中
・中村真人・・・スイング率44.6%、コンタクト率72.9%
・松井稼頭央〔左打席〕・・・スイング率41.9%、コンタクト率49.4%
・草野大輔・・・スイング率40.4%、コンタクト率63.9%
・牧田明久・・・スイング率39.6%、コンタクト率50.0%
・松井稼頭央〔右打席〕・・・スイング率39.4%、コンタクト率58.0%
・内村賢介〔左打席〕・・・スイング率39.1%、コンタクト率65.6%
・ガルシア・・・スイング率36.9%、コンタクト率46.1%
・鉄平・・・スイング率34.1%、コンタクト率63.8%
・岩村明憲・・・スイング率32.3%、コンタクト率47.5%
・高須洋介・・・スイング率31.4%、コンタクト率67.8%
・嶋基宏・・・スイング率29.5%、コンタクト率73.4%
・山崎武司・・・スイング率28.7%、コンタクト率38.7%
・内村賢介〔右打席〕・・・スイング率27.3%、コンタクト率66.7%
・横川史学・・・スイング率23.2%、コンタクト率34.0%
追い込まれてからもボール球に手を出さない。特に空振りを誘う投手のウイニングショットになる低めボールゾーンののスイング率は29.7%と少ない。ルイーズ58.3%、牧田39.0%、聖澤44.4%、中村54.7%、松井稼(右)53.7%(左)53.9%、内村(右)27.6%(左)52.2%、ガルシア29.3%、岩村27.1%、高須34.0%、草野47.9%、横川30.4%、であるから、その秀逸さを再確認することができる。
以上、嶋はボール球に手を出さない優れた打者であることが再確認できた。
では、
ボール球に手を出す頻度は少ないのに、なぜ三振が多いのだろう?
という疑問が浮かんでくる。
調べてみたら、他の打者はボールゾーンで多く三振を記録しているのに対し、嶋はストライクゾーン内で三振を喫してしまっていたのだ。(下記表参照)
昨年の嶋はボール球にはしっかり対応できていたと言えるが、ストライクゾーンの球へのアジャストが上手くいかなかった、と言える。【終】


真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドにみえるそんな信州人による、楽天イーグルス応援ブログ。各種データや記録などを用いながら魅力を探ります。
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