患者の名は新実克己。妹は有名な女優である。彼は15年間一言も喋らず、排泄と食事以外はただ寝転んでいるだけだった。世界的にも珍しい「緘黙」状態である。面倒をみていた母親の死をきっかけに、五百頭(いおず)病院に入院し、三人の精神科医によって治療をうけることになった。

多くの著作を持つベテラン精神科医・春日武彦が初めて長編小説を書き下ろした。個性的な精神科医3人は、それぞれの方法で新実の症状に挑戦していく。果たして彼は15年間の沈黙を破るのか。

人の心の中は混沌としている。春日武彦はそのカオスをずっと見続けてきたのだ。さすがに臨場感はハンパではない。医師が描く医療の最前線、それも精神科ともなれば関係者でなくては書けない物語だ。

医療小説としても一級品。ピーンと張った緊張感をぜひ楽しんで欲しい。

(東えりか)







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