元麻布ファクトリーの原作で宮島礼吏が『週刊少年マガジン』に連載中の漫画『AKB49 恋愛禁止条例』第6巻が、1月17日に発売された。スポットライトを浴びる華やかなアイドルの世界であるが、ひたむきな努力が求められることを気付かせる内容であった。
 『AKB49』は実在のAKB48メンバーが登場し、AKB48の舞台裏の世界を描くリアリティと、男子高校生が女装してアイドルを目指すフィクションが混ざった作品である。この巻では研修生の吉永寛子がアイドルを続けるか否かの岐路に立たされる。

 主人公・浦山実は片思いの吉永を応援するために女装して浦川みのりと名乗り、オーディションを受け、吉永と共にAKB研修生になる。吉永がアイドルとして成功することが浦山の目的であるが、彼自身がアイドルとしてのやりがいに目覚めてしまう。研修生公演のセンターに抜擢され、前田敦子や大島優子、高橋みなみら、そうそうたる正規メンバーからも注目株と認識される。
 対して吉永の存在感は霞んでしまった。浦川のライバル役には岡部愛が存在し、サイドストーリーとなる擬似恋愛的な絡みも正規メンバーとの間に成立している。吉永が存在しなくても物語を成立させることは不可能ではない。タイトルも『AKB49』であり、現在のAKB48に一人加わったという意味になる。吉永を通過点で終わらせても物語は成立する。

 一方で主人公が熱い言動で相手の気持ちを引き戻すという展開も定番である。どちらに転ぶことも十分にあり得る展開になった。最後は吉永自身の決意に重きを置いた。主人公の見せ場も作りながらも、吉永自身の問題として描いている。
 吉永は才能面で抜き出た存在ではなく、主人公のような熱血でもない。物語ではスポットライトを浴びにくい存在である。浦川のような熱血漢や岡部のような才能あるクールビューティーの方がキャラクターとして描きやすい。その吉永を『AKB49』では、ひたむきな努力家として美点を浮かび上がらせた。これはAKB48の実態を突いている。

 商業主義的と批判されるAKB48であるが、もともとは「会いに行けるアイドル」としてローカルな劇場で公演を繰り返してきたグループである。マスメディアに乗っかった商業主義から遠いところに位置していた。ひたむきに公演を繰り返す努力家でなければ今日のAKB48は存在しなかった。
 この巻では前田敦子が首位に返り咲いた「第3回AKB48選抜総選挙」が描かれるが、そこでの前田はクールさや器用さではなく、ひたむきな努力が報われて感極まった存在として描かれた。熱い心で周囲に影響を及ぼす主人公は漫画的に面白いが、ひたむきな吉永もアイドルを目指す女性の象徴として必要な存在である。
 そして主人公は、あくまで吉永に恋心を抱き、彼女の夢を応援する存在である。前田敦子や大島優子、高橋みなみらと微妙な関係になるというファンが羨む状況でも、ぶれることはない。冒頭からの物語の枠組みを維持しているところに作品の骨太さがある。

(林田力)