【ITビジネスマンの寺業計画書】タテをヨコにする発想

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早いもので浄土宗のお坊さんになって一年が経ちました。この一年間は、実際の現場で色々なことに戸惑いながら、ひたすら目の前のお勤めに全力投球する日々でした。そんなあっという間の一年の中で気づいた、お坊さんとして生きていく上で大切にしたい時間の流れについて書きたいと思います。

●お坊さんの一日の基本パターン
東京で仕事をしていた頃の生活リズムと比較してみると、お坊さんの生活に「週休二日」のように決まった休みはありません。月末に振り返ってみると「今月は休日が数日しかなかった」ということも多くあります。大変な生活のようですが、普段の一日はかなり余裕のある時間の流れの中で過ごしています。下のイメージは9月の土日を含めた四日間の実際のスケジュールです。

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朝五時半起床、午前中に「月参り」をすませ、午後からは寺務所や本堂で作務に取り組みます。夕食を終え、入浴・読書のあと、夜の十時には消灯。土日は「お年忌」や「お墓参り」のお勤めなどもあります。ご覧のように午前中にお勤めのピークがやってくることがほとんどです。

「朝が早くて大変そうだなぁ」「でも昼寝ができてのんびりしてるなぁ」などいろいろな感想をお持ちになられると思います。

このリズムに変化があるとすれば、お檀家さんから訃報のご連絡を頂いた時です。お葬式を優先させるため、事前に入っていた予定を調整してスケジュールを組み直しますが、それでも18時や19時までお参りに行くことはほとんどありません。朝早くから動き、お昼過ぎまでに仕事のピークを迎え、その後は余裕のあるスケジュールで過ごす。これがお坊さんとして僕が過ごす一日の基本パターンです。
 
●お坊さんの方向性は「いかに長く続けられるか」
今度は少し視点を変えて、今の生活パターンから想定する将来の方向性について考えてみましょう。この先、僕はお坊さんとしてどのような時間を過ごすのでしょうか。

その前に、ビジネスマンとして働いていた頃に描いていた人生計画をお話します。大学卒業後、大企業へ就職。ネットバブルがはじけた時期でしたが、定年まで安定して働くこともできそうな生活が始まりました。しかし、ドラスティックに変化するネット業界と比較して、大企業ゆえにスピード感がでない自分の環境に閉塞感をおぼえ、ベンチャー企業へ転職。
 
そこではいかにしてサービスや事業、会社を大きくしていくか、株式公開して、ストックオプションを行使し、自分自身も出世して、たくさんのお金を手にして引退するか、もしくは独立してもっと稼ぐか...そんなことを考えていました。そのために短い期間でどれだけ成果をあげるかという価値観をベースに生活していました。自分がいかに「早く大きくなるか」、それが何をするにおいても優先される判断基準であったかもしれません。


それが、お坊さんになってみるといかに「長く続けられるか」を意識する生活へと変化していったのです。
例えば、お坊さんには定年がありません。弟子に住職の座を譲り隠居するということもありますが、それでもお坊さんであることには変わりありません。お坊さんとして生きていくということは、この一日のリズムを一生続けていくというになるのです。

僕が「お坊さんになって一年が経ちました」と言っても、それはお坊さんの資格をとったというだけのことです。本当の意味でお坊さんになるためには、長い人生のすべての時間をかけて精進していくことが必要だと感じています。また、お寺は仏教を伝えていく大切な場所であり、決して途絶えることなく続いていかなければならない場所です。それが故に、「いかに長く続けられるか」という部分に意識が向くようになりました。

 
●「ヨコ」から「タテ」へ――長期志向/未来志向
イメージしやすいように、会社に務めていた頃と、お坊さんになってからの将来に対する方向性を図にしてみました。

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定年や引退という、仕事をする上でのゴールがなくなりました。職業というよりは「お坊さんとして生きる」というライフワークを手に入れることで「いかに短く結果を出すか」という短期思考が、「どれだけ長く続けられるか」という長期思考/未来志向に変わりました。

お坊さんとして生きていくことで、この大きな流れの変化に気づけたこと。それが、僕にとってこの一年での大きな収穫となりました。自分自身がコントロールできる時間が増えた一方で、お坊さんとしていつでも確実なアウトプットを出すために自己管理を徹底し、懈怠(なまけおこたること)と慢心(おごりたかぶること)と戦っていかなければならない。時間がたくさんあるということはそれだけ自己管理し、ストイックでなければならないと感じています。

まだまだ「タテに伸びよう」と焦る気持ちになることもありますが、来年以降も身の丈で長く生きる「ヨコに伸ばそう」へと人生をシフトさせていきたいと思います。これからも『彼岸寺』と『ITビジネスマンの寺業計画書』をよろしくお願いいたします!