週刊エコノミスト(1月24日号)は「世界恐慌」を特集した

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欧州の債務危機をきっかけ、「世界恐慌」が現実味をおびてきた。毎日新聞社の「週刊エコノミスト」は2012年1月3、10日合併号と1月24日号の2回にわたり「世界恐慌」特集を掲載し、欧州の債務危機が「21世紀型」世界恐慌に発展すれば、「30年以上の世界的な大収縮を覚悟しなければならない」と指摘した。

「2012年 世界恐慌」(相沢幸悦、中沢浩志著 朝日新聞出版)や「世界恐慌の足音が聞こえる」(榊原英資著 中央公論新社)と、「世界恐慌」を題材にした本も続々出版されている。

「欧州危機」が新興国に波及する

「週刊エコノミスト」(1月24日号)は「恐慌を学ぶ!」の見出しで、1929年と今の類似点を示し、危機脱出へ処方箋を導き出そうとしている。

ギリシャ財政の破たん懸念をきっかけにした欧州の債務危機が、「イタリアの長期金利の上昇やドイツ国債の札割れにまで波及した現状は『21世紀版の世界恐慌第2波』の序章になるかもしれない」というのである。

歴史を紐解けば、1929年の「暗黒の木曜日」をきっかけにした世界恐慌は、米国の株価大暴落と1931年の欧州金融危機の発生、さらに東欧や中南米の農作物価格の暴落といった「負の連鎖」が米国や日本に波及し、世界恐慌を引き起こした。

2008年のリーマン・ショックで欧米は多額の財政出動を行い、11年のギリシャに端を発した欧州の債務危機がスペイン、イタリアへの波及し、いま欧州の金融危機を引き起こしている。

欧州の金融機関は今後増資などで財務の健全化を図っていくが、その過程で増資に対応できない中小の金融機関の経営破たんや、新興国からの資金引き揚げ(世界的な金融収縮)が起こり、「21世紀版」世界恐慌へとつながるといったシナリオだ。

すでに欧州最大の輸出先の中国経済にも、欧州危機の影響が出始めている。

一方で、懸念される金融危機のトリガーを引きそうなのが国債の格下げ。米大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は2012年1月13日に、フランスやオーストリアの国債を最上格の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1段階引き下げるなど、ユーロ圏9か国の国債の格下げを発表した。

それにより、これらの国債を多く保有する欧州の金融機関の経営が悪化して景気低迷が長引くとの懸念が広がっている。日本でも円高・ユーロ安が進み、株式市場では金融株や輸出関連株が軒並み下落した。

日本の実体経済にも影響が出始めている。日本銀行が1月16日に発表した「地域経済報告」は、東日本大震災の復興特需が続く東北でさえ、景気判断は「横ばい」。北海道や関東・甲信越、東海、近畿など7つの地域で下方修正した。原因は世界経済の減速。アジアなどを通じた輸出減少の影響が出てきており、白川方明総裁は欧州の債務問題を「最大のリスク」と懸念する。

国債格下げ、日本も例外ではない

欧州での国債の格下げの影響は、すでに地域経済に出ている。ギリシャ国債を大量に保有していたベルギーの大手金融機関、デクシアが一部国有化されたことは記憶に新しいが、ベルギーではその後も鉄鋼最大手のアルセロール・ミタルが200年続いたリエージュ州の工場閉鎖を決めるなど、景気後退の足音は確実に、急速に高まっている。

日本国債も、いまや中国と同じ「ダブルAマイナス」(S&P、上から4番目)で、財政再建のめどが立たなければ、もう一段の格下げもある。

ビジネス・ブレークスルー大学の田代秀敏教授は、「欧州の債務危機が収束し、米国の経済成長が回復したとしても、そのときは日本の短期国債や先物を多く保有する外国人投資家が今度は売りに回るので、日本国債は危機に瀕する恐れがあります」と、日本国債が暴落する可能性を示唆。さらに、証券大手の経営悪化から日本の金融システムが危機的状況に陥るリスクを「無視できない」という。

「復興特需」が消えて、待っているのは経済の大収縮ということになりかねない。