今年なんと81歳のクリント・イーストウッド監督とレオナルド・ディカプリオ、初顔合せの作品は、50年もの間アメリカのFBI長官を務めたJ・エドガー・フーバーの半生が主題。FBIの礎を築き、長官として8人の大統領に仕え、3つの戦争を経験した強者で、大統領からも恐れられ強大な権力を手にしていた男の物語だ。しかし、私生活には謎も多い。同性愛の噂もあり、副長官のクライド・トルソンは、公私共にパートナーだった。そんな複雑で孤高の男を演じたディカプリオは、先日のゴールデン・グローブ賞ドラマ部門主演男優賞にノミネートされていた。惜しくも受賞は逃したものの、いい感じに年をとったムーンフェイスにアルマーニのタキシードでレッドカーペットに登場した姿は、さすがのセレブな貫禄。J・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)は20代の頃に司法省の急進派対策課を任され、手段を選ばない強硬な方法で昇進していく。それは同居の母親アニー(ジュディ・デンチ)の期待に応えるためでもあった。一方で、秘書室勤務のヘレン・ガンディ(ナオミ・ワッツ)に結婚を申し込むが、仕事第一で結婚に興味の無い彼女はプロポーズを断る。そしてその後ヘレンはエドガーの個人秘書に。司法省捜査局(FBIの前身)の長官代行に任じられたエドガーは、彼の厳しい基準に合う捜査官を探すが、そこでクライド・トルソン(アーミー・ハマー)と運命の出会いをする。その頃からエドガーは要人の秘密を集めた機密ファイルを作り始め、権力への階段をさらに上っていくが...。

確かに重厚なドラマ。イーストウッド監督らしい、光と影に凝った映像とセンスの良い選曲、丁寧な人間描写。脚本は「ミルク」でアカデミー賞脚本賞を受賞したダスティン・ランス・ブラック。相変わらずの熱演、ディカプリオ。20代から70代までを演じ、母親を偏愛し、国民からの称賛を渇望するあまりに、恐ろしいほど野心的になっていく様子は、さすが圧巻の演技。「ソーシャルネットワーク」の双子役でブレイクしたアーミー・ハマーは品があって美しく、エドガーへの秘めた愛に悩む姿がステキだし、大御所ジュディ・デンチやナオミ・ワッツの抑えた名演も安心して観ていられる。こんな題材を映画化するには最強のチームだ。

で、期待通りの良い作品なのだが、なぜか強く心に響かなった。感動の波が来るのをずっと待って終わってしまった感がある。時代設定が食傷気味なのか、時間軸を行き来するストーリー展開が懲りすぎたのか。イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」や脚本家ブラックの「ミルク」で受けた衝撃や感動を期待していたが、それとはちょっと違う。ディカプリオは確かにスゴイのだが、過去に似たような"難しい役"が多く、ちょっと見飽きた感がある。飽くなき挑戦は素晴らしいが、少し方向性を変えたレオ様が見てみたい。

米国での批評家や一般の評価もなかなか厳しくて、「ロッテン・トマト」では批評家は42点、一般映画ファンは52点、「Metacritic」では59点 、imdbでは10点中7.1点、。ちょっと辛口すぎると思うが、こんな制作陣やキャストだから、ものすごく期待値が高かったからの結果では、と思う。良質な映画であることは間違いない。

(★★★1/2☆)
1月28日(土)丸の内ピカデリー他、全国ロードショー