ユニクロのダウンはNYの冬を変えたか。

ユニクロのダウンはNYの冬を変えたか。
ユニクロのグローバル旗艦店がNYに開店して3ヵ月が経過した。奇しくもオープン直後、米国の景気減速に端を発したウール街抗議デモが発生。1年でいちばんの書き入れ時の年末商戦に水を指すかと思われたが、ユニクロの売上げには大して影響はなかったようである。

むしろ、オープン前の一大キャンペーンが奏功し、地元商業界では「この冬は、ユニクロがNYのファッションマーケットを席巻したのでは」という見方も出ているほどだ。

筆者はこれまで何度もNYで年末年始を迎えているが、90年代は暖冬でホワイトクリスマスとはいかなかった。そのためスタイリングもレザーやウールジャケットで十分事足りた。2000年以降もしばらく暖冬が続いたものの、ここ数年は地下のスチームパイプから噴き出す蒸気に見合う寒さが訪れている。

マンハッタンのビジネスマンやワーキングガールでは厚手のウールコートにカシミアのマフラー、ワーカーや学生にはダウンジャケットという定番スタイルが絵になる恒例の冬が戻ってきたようである。

元来、NYファッションのカラリングは、「アースカーラー」が基調で抑え気味のトーン。冬場もワーキングガールが着るコートはベージュやライトブラウンが多く、ビビットカラーはほとんど見られない。まして、メンズになるとダウンジャケットすらブラックやネイビーといった色がほとんどで、まさにドブネズミルックと言われてもしょうがない光景である。

ところが、この冬は違った。ユニクロのカラフルなダウンがマンハッタンのカラーチャートを変えてしまったのである。五番街店や34丁目店のオープン前は、一大キャンペーンによる金赤ロゴが露出したくらいだったが、12月以降は五番街やマジソンアヴェニューなどメーン通りを歩くニューヨーカーの中には、ひと目でユニクロのダウンを着ているとわかる人々を大勢見かける。

マンハッタンを衛星で撮影し、ニューヨーカーのファッションをドットで表した時、ユニクロのダウンを着る人々のパーセンテージがどのくらいか。デジタル統計学で検証すればもっと正確なデータが出るかもしれないが、ダウンを着ている人々の半分くらいがユニクロといっても過言ではない。それほどあのビビッドカラーのダウンは目立つのだ。

ご多分に漏れず他店でも似たものを売り出し始めているが、 少なくとも業界人の目から見ると、ファスナーや袖先・裾の始末の手法でユニクロか、そうでないかはすぐに判断できる。 今冬のNYのクリーンなカジュアルで一歩も二歩もリードしているのは、ユニクロと言えるだろう。

ユニクロ以外では、アバクロンビー&フィッチやその姉妹ブランド、ホリスターを着ている人々がいるが、どちらもシェイプされたフォルムでこちらは若者が主流。色もネイビーやレッドなどでブランドであることを除けばさして特徴はない。NY在住20年以上の友人に言わせると、「ダーティなカジュアルでは、これらの方が牽引している」のだそうだ。日本では若者の方がカラフルの色を着るが、NYでは完全に逆転してしまっている。

まあ、ユニクロはベーシックカジュアルで、ターゲットを全年齢にしているため、人種のるつぼであるNYではあらゆる階層の人々が5番街店、34丁目店、ソーホー店を訪れ、購入しているのではないか。景気減速の影響が深刻なだけにカラー・サイズとも豊富で、コストパフォーマンスの良いユニクロのダウンは、インカム状況に敏感な大多数のニューヨーカーにとってありがたいアイテムになっていることだけは間違い。

年が空け、NYでも冬のクリアランスセールに投入した。ユニクロも店頭では春物が展開され始めたが、まだまだNYの春は遠く、商品の動きは鈍い。大統領選挙の今年、NYの景気は回復するのか。それがユニクロにとって吉と出るか、凶とでるか。結論を出すにはまだ時期尚早のようである。

写真VOICE
fromHAKATA PARIS NEWYORK
釼 英雄|大学卒業後、マンションアパレル、小売業、デザイン会社勤務を経て、ファッションPR会社ヒロスワードでプレス業務、広告制作などを手がける。現在は地元福岡でクリエイティブディレクターとして活動。ファッション、流通関連の業界誌にも執筆。
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