宿坊として人気の秩父・大陽寺の浅見住職。出世も金銭も、願えばついてくるものではなく、あくまでも結果だと説きます

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“癒やし”を求める若い女性を中心に、人気の旅行先となっているパワースポットですが、最近では男性にもそのブームは広がっています。

 ただ男性の場合は、仕事で疲れた心を癒やすため、仕事がうまくいくように、など「仕事運」アップの目的が多いのが特徴です。

 日本全国に、仕事運に効くといわれている神社仏閣は数多く存在していますが、はたしてそこに行ってお願いするだけで運気はアップするのでしょうか。

 さまざまなメディアで人気の宿坊として取り上げられている埼玉県秩父市の山中にある大陽寺(だいようじ)。この寺の浅見宗達(あさみ・そうたつ)住職が、「仕事運をつかむ」ための心構えを説いてくれました。

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 私は普通のサラリーマンだったのですが、各地の寺社を回るうち、山形県の出羽三山(でわさんざん)で金縛り状態になってしまった。怖くて、「今までのいいかげんな生き方を許してください」と必死にお祈りしました。この体験の後に出家したのです。

 私が住職を務める大陽寺(たいようじ)では、訪れる人にそんな“気”を感じてほしくて、写経と座禅をしながら自然の中で自分を見つめ直してもらいます。女性は“癒やし”を求めて来る人も多いのですが、男性は自分に集中して何かを変えたいという人が目立ちます。皆さん仕事の行き詰まりや、人生このままでいいのかという悩みを抱えているのでしょう。

 ただ、ひと言で「仕事の運をつかむ」といっても、そう簡単ではありません。ひとつだけいえるのは、今やっている仕事がイヤで何かを変えようという人は、どこか気持ちが自分に集中できていないということです。

 自分が見えなくなって、迷っているときに方向転換しようとしても、結局は同じ失敗を繰り返し、「もうダメだ」と投げやりになってしまう。そういうときこそ集中して、自分がひとつずつ積み上げていくものはなんなのかを考えたほうがいい。

 焦って、頭の中が真っ白になって、なんでも手当たり次第というのは、まだまだ落ちていく段階。ジタバタせず、もう焦ってもしょうがないと悟ったときに初めて腹が据わったといえます。

「本来無一物(ほんらいむいちもつ)」という座禅の教えは、「人間、もともとは何もないではないか」という考えです。贅沢(ぜいたく)しようと思うから人と比べ、悩みが出てくる。もともと何もないことが前提ならば、モノや人に振り回されたりしない。

 出世欲とか金銭欲というものを否定はしませんが、出世や金銭はあくまで結果としてついてくるもの。仕事の運をつかみたければ、遠くを見ないで、自分の足元を見たほうがいい。ゆっくりでもいいから一歩ずつ前進することでしょう。

(撮影/五十嵐和博)

■秩父・大陽寺 浅見宗達(あさみ・そうたつ)住職
会社員時代に自分の生き方に疑問を持ち、京都・妙心寺で修行。縁あって埼玉県秩父市にある大陽寺の住職となる。宿坊に泊まっての座禅体験とサラリーマン経験を生かしたわかりやすい説法が人気。大陽寺は山深い場所にあり“日本のマチュピチュ”とも呼ばれる。鎌倉時代末期に山岳信仰の場として開かれ、現在の建物も江戸時代から残る古いもの。宿坊や座禅体験などの詳細は【http://www.taiyoji.com/】

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