今月スタートしたNHK大河ドラマ『平清盛』。貴族が支配していた平安末期の日本で、武士の頂点に立ち、海外交易で国を豊かにしようと人々に説いた人物の物語ですが、彼の絶頂期から数年後に別のヒーローが生まれていました。浄土真宗の宗祖、親鸞その人です。

 昨年1月1日から連載開始となった新聞小説、『親鸞 激動篇』。先月、全336回の連載が終了し、このたび単行本が出版されました。この小説は、北は釧路新聞から、南は琉球新報まで全国44紙に連載され、世界最大規模の連載紙の多さだそうです。

 『親鸞 激動篇』では、越後へ流罪となった親鸞が、法然上人の訃報を聞き、新たな旅へと出るところから物語が始まります。

 当時、「民はどんなに暮らしが辛かろうと神仏に対する恩返しとして、領主にきちんと年貢を納めなさい。年貢を納めなければ神罰や仏罰が下る」という教えに対して、親鸞は「仏の前では、身分の差はなく、下人も、百姓も、武士も、領主も、貴族も、人としてみな同じ」という教えを説きながら旅を続けました。

 その教えがすぐに広まり、あまりに親鸞の信者が増えたことに対する危機感から、親鸞は命を狙われるはめに。しかし、その刺客までをも改心させるほか、手に汗握る予想外のストーリーが次々と展開されていきます。本書には難しい宗教用語はなく、まるで一気に読める冒険小説のようです。

 時代のヒーローは、後世の人間に多くのことを教えてくれます。日本の歴史には、坂本龍馬、宮本武蔵、武田信玄、織田信長などなど、人気のあるアクティブなヒーローが数多く存在しますが、僧である親鸞も、本書を読むと、まさにヒーローであったのだということに気づきます。人々に安らぎを与える静かなヒーロー。もしかしたら、いまの世界で求められているのは、彼のような人間なのかもしれません。

 貴族による統治から武家による統治へと政権が移り、政治・経済・社会の劇的な構造変化が起こった当時、弱い者を救うヒーローとして登場した親鸞。海のような広い心と深い愛で民衆を導く親鸞の存在は、政治が混乱し、格差が広がる現代に生きる私たちのヒーローであることも再認識させられるはずです。



『念仏をとなえる冒険小説−五木寛之の最新作『親鸞 激動篇』』
 著者:
 出版社:講談社
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