「ステマ」というレッテル貼りワード拡散で広報活動の萎縮懸念

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今年に入ってから「ステルスマーケティング」や「ステマ」という言葉がネット上では流行りまくった。ヤフー・トピックスでも関連記事が出て、地上波TVでも特集が組まれるほどであった。

そんな折り、@sammy_sammyのこのツイートはやや冗談めかしているものの、現状を詳しく解説しているといえよう。

ステマステマと騒いだ結果、匿名では言いたいことも言えない世の中になったとしたら、今回の騒ぎは匿名否定派によるステマだったと定義付けられることだろう。

https://twitter.com/#!/sammy_sammy/status/158707194953605120

今、商品をネット上でホメたり、何らかのサービスを紹介するとそれが「ステマ」扱いされてしまう。少し前までリンクを貼った上で優れた商品やサービスを紹介すればそれは「キュレーション」と言われたり、「知の共有」としてむしろ「良いこと」扱いされていたのに空気がかなり変わったようだ。

【「ステマ」は「嫌儲」派に良い武器を与えた】

過去の「のまネコ騒動」やら「2005年のアフィブログ叩き騒動」といった件に代表されるネットの「嫌儲」(ネット上で儲けることを嫌がること)派に「ステマ」という「言葉の武器」と「叩く正当性」を与えたことが今回のステマブームの画期的な点だとオレは思っている。

さて、ここでいう「言葉の武器」とは一体何か。言いかえれば「レッテル貼り」でもあるのだが、例えばネット上で韓国を擁護する発言をすると「在日認定」をされる。一方、韓国や在日韓国人を叩いた場合は「ネトウヨ」扱いされる。「ネトウヨ」を連呼する者に対しては、「連呼リアン」というまたもや「在日認定」の新バージョンでレッテル貼りをする。レッテル貼りをされることで、された側は「ムムムム……」と顔を真っ赤にして怒りたくなるも、所詮はネット上の顔が見えない敵なだけに何もできない。

今回、商品を紹介するだけで「ステマ」扱いされるようになったのは、この「レッテル貼り」に新たなキラーワードが登場したことを意味する。「嫌儲」派からすれば、とりあえず裏で金銭が動いている臭いが少しでもすれば「ステマ」と指摘しておけば、一応の正義がそこには存在する。

本当にステマがあった場合、ステマのレッテル貼りをすることは正義の行動だったわけだ。実際は違ったとしても、「じゃあステマじゃない証拠を出せ」というもはや「悪魔の証明」ともいえるさらなる武器となる言葉を投げかけることによって、疑いを持たれた人間を困惑させることが可能だ。疑われた人間の評判を落とすことも可能である。

極端ではあるが、「えっ? あの人ってツイッターでお金もらってサービスをホメたりしてたの〜。なによ! 幻滅したワ! 騙された! もうフォロー解除するワ! 謝罪と賠償を要求します!」などという事態だって発生し得るのである。

しかも、「在日」「ネトウヨ」「連呼リアン」は匿名の人々同士でやりあっていることがほとんどだが、「ステマ」の場合は企業や実名の人々にレッテル貼りをしているだけに、失うものがある人にとってはダメージをくらうわけだ。本当にやっていたのであれば当然の報いではあるものの、単なるレッテル貼りだった場合はやりきれない思いをすることだろう。

【ステマの拡大解釈バカにより、真っ当な「広報」が萎縮することを懸念する】

で、オレ自身はこういったレッテル貼りも相手の評判をじわじわと落としていくやり方もネットの風物詩のようなもので、「しょうがねぇなぁ」くらいにしか思わないのだが、一つ問題視しているのが、「ステマ」の拡大解釈による広報活動の萎縮である。

企業の広報活動というものは、新商品やサービスをリリースした時などに、メディアに対してプレスリリースなどでアプローチをし、商品を紹介してもらう。人手が足りない場合や、さらにプッシュしたい場合はPR会社にフィーを支払い、彼らに広報代行をしてもらう。

これら活動により記事が出たりテレビで紹介された場合は「フリーパブリシティ」と呼ばれ「あくまでもメディアの側が中立的な記事として取り上げる価値アリと判断」としたことになる。PR会社へのフィーはあくまでも「活動費」である。彼らは広告費を払うよりも格段に安い「フィー」によって「フリーパブリシティ」を出しているというわけだ。

こういった企業広報部の活動とPR会社の活動でさえ「ステマン」(「ステマ」と言い続けるしか能のない人間のこと。今オレが作った造語)にとっては「ステマだ!」ということになれば、もはや「広報活動」は破綻する。ネットユーザーや消費者からの圧力に弱い企業は電凸でもあろうものならば、「PR会社に発注してはいけないんでしょうかねぇ……」「どうしましょうか……『ステマ』って書き込みがすごくて……しばらく情報発信やめましょうか……」なんてことになる恐れも。

いいか、ステマンのお前ら、「広報活動」と「ステルスマーケティング」は別物だからな。そこのところしっかりと理解して、元気にセミやカバディ選手のごとく「ステマステマステマステマ」と同じことを言い続けとけ。

文/中川淳一郎(編集者)