すでに発表されている第146回(2011年下半期)直木三十五賞の候補6作品は以下の通り。

 伊東潤『城を噛ませた男』(光文社)
 歌野晶午『春から夏、やがて冬』(文藝春秋)
 恩田陸『夢違』(角川書店)
 桜木紫乃『ラブレス』(新潮社)
 葉室麟『蜩ノ記』(祥伝社)
 真山仁『コラプティオ』(文藝春秋)

 今回の顔ぶれは、6人のうち4人までが初候補。
 経験者2人のうち、恩田陸は、133回の『ユージニア』、134回の『蒲公英草紙 常野物語』、140回の『きのうの世界』につづいて、3年ぶり4度目の候補入り。
 葉室麟は、140回『いのちなりけり』、141回『秋月記』、142回『花や散るらん』、145回『恋しぐれ』に続いて5度目。
 直木賞待機のベテラン2人が、初候補の4人を迎え撃つ格好だ。

 初顔の中で台風の目になりそうなのが、発売以来、口コミで話題が広がり、静かなブームを呼んでいる桜木紫乃『ラブレス』。北海道・標茶の開拓小屋で生まれ育った少女・百合江と、対照的な性格の妹・里実の波瀾万丈の人生と、現代を生きるそれぞれの娘たちの人生を重ね合わせ、力強い物語を紡ぎ出してゆく。

 しかし、大本命はやはり、葉室麟の時代小説長編『蜩ノ記』だろう。7年前に起こした事件がもとで、10年後に切腹することを申しつけられ、それまでの日々を山村に蟄居して黙々と家譜(藩の歴史)の編纂に励む男、戸田秋谷。その監視役を命じられた主人公・庄三郎は、秋谷の清廉潔白な人柄と優秀な能力に次第に惹かれてゆく......。
 前4回の候補作とくらべても、今回がいちばん可能性が高そう。時代小説では、伊東潤の短編集『城を噛ませた男』も面白いが、さすがに葉室麟をさしおいていきなり受賞する可能性は低いだろう。

 対する恩田陸の『夢違』は、夢を映像として記録する技術が確立された近未来(推定2030年代ごろ)を背景にしたSFサスペンス。夢の記録映像"夢札"を解析する"夢判断"を職業にしている野田浩章は、ある日、死んだはずの女性を図書館で目撃する。そのころ、各地の小学校で奇妙な出来事が起きていた。教室でとつぜんパニックを起こし、泣きわめく子供たち。ある女子児童は、「何かが教室に入ってきた」と説明する。どうやら集団白日夢らしい。浩章は、子供たちの夢札を分析する仕事を受け、現地に赴く......。
 いかにも恩田陸らしい(彼女にしか書けない)小説だが、これまで近未来SFが直木賞を受賞した例がないことを考えると、ハードルは高い。

 残る『春から夏、やがて冬』と『コラプティオ』に関しては、いくら文藝春秋の刊行作品とはいえ、受賞確率はかぎりなく低そうな気がするが、なにしろ直木賞なのでなにが起こるかわかりません。

 受賞作が決まるのは、1月17日の夜。今回もニコニコ動画で、受賞作発表の瞬間と受賞会見が中継される(http://live.nicovideo.jp/watch/lv76739590)。放送は午後6時から。ナマで見られない方は、タイムシフト予約をお忘れなく。

 なお、これまた恒例の、大森望・豊由美による「文学賞メッタ斬り!スペシャル」第146回芥川賞・直木賞予想編は、ラジオ日本「ラジカントロプス2.0」(http://blog.jorf.co.jp/)で日曜深夜24時から放送予定です(ポッドキャスト配信予定あり)。

(大森望)







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