ビールと誤飲することはあるのか?(写真は、アサヒビール「DRY ZERO」の公式サイト)

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アサヒビールが2012年2月に発売するノンアルコールビール「ドライゼロ」に、キリンビールが噛みついた。

「ドライゼロ」の名称やパッケージデザインが、アサヒの主力ビール「スーパードライ」に酷似しているとして、キリンの松沢幸一社長が「誤飲が起きる可能性がある」と指摘した。会見で社長が他社商品に言及するのは異例で、ノンアルコールビールを巡って思わぬ「場外戦」が勃発した。

パッケージデザインが「スーパードライ」にそっくり

すっきりとした後味が特徴というアサヒの「ドライゼロ」は、独自の技術でビールの原料である「麦汁」を使用せずにビール成分を再現。さらにろ過前に氷点下で貯蔵することで不純物や雑味成分などを取り除き、本格的な味わいを実現した、という。

しかし、問題はその名称とパッケージデザインにある。「ドライゼロ」の銀色のパッケージは、ビールの「スーパードライ」にそっくり。名称の「ドライゼロ」も、それがすぐさまノンアルコールビールとはわかりづらく、「スーパードライ」の「派生商品」として売り込んでいこうという思惑がみてとれる。

それらが他のビール会社の、懸念の声につながっていて、キリンの松沢社長は1月11日の会見で、「未成年の飲酒や誤飲による飲酒運転につながりかねず、わたしは非常にあのデザイン、ネーミングでの商品販売を懸念している」とコメントした。

サントリー酒類の相場康則社長も、「業界全体として(誤飲防止に)取り組んでいるなか、規制強化につながりかねない。ノンアルコールビールは成長市場であり、健全な発展にマイナスにならなければいいが」と、顔を曇らせた。

一方、アサヒは「誤飲防止には最大限、配慮しています」と反論する。「ドライゼロ」のパッケージの中央には、商品名よりも大きく、赤字で「ノンアルコール」と記し、あわせて「アルコール0.00%」の表記を強調した。

また、2月からは「スーパードライ」などのビールに、「お酒」のマークを入れることにしていて、「誤って手にとることはないと考えています」と話す。

ノンアルコールビールはいまや貴重な成長市場

ノンアルコールビール市場は、右肩上がりの大ヒット商品。東日本大震災の影響があったとはいえ、2011年のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の出荷量が縮小傾向にあった中で、ノンアルコールビールは14万9400キロリットルと、前年から2割増となったようで、いまや貴重な成長市場なのだ。

それだけに、ビール各社は2012年の「販売拡大」を目論んでいるところ。先行するのは、「オールフリー」を擁すサントリーで、11年は販売で首位に立った。追うキリンは「キリンフリー」をテコ入れ。1月中旬から、麦汁100%で香料と人工甘味料を使わず、ビールの「のどごし」を再現した新製法の商品を順次発売する。

アサヒは「ダブルゼロ」を販売しているが、このジャンルでは出遅れ感が否めない。いわば巻き返しを狙って、満を持して投入するのが「ドライゼロ」というわけだ。

ちなみに、2011年のビール類出荷量では、アサヒがキリンを上回り、2年連続の首位となる見通しだ。