日本では機能しにくい里親制度

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1月6日の朝日新聞社説は「里親制度―なり手を掘り起こそう」。「東日本大震災で親を失った子どもとその養育家庭を支援しようと、仙台市に『東北・SOS子どもの村情報センター』ができた」ことや、そのセンターを設立したのがNPO法人「子どもの村福岡」であることを紹介している。

市がNPOに里親普及事業を委託したところ、福岡市ではここ五年間の里親委託率が6.9%から24.8%と「飛躍的に伸びた」という。里親委託率とは、特定の地域における「里親委託児童数」「乳児院入所児童数」「児童養護施設入所児童数」の合計を分母に、「里親委託児童数」を分子にして出した数字のことである。

里親委託率が増加している自治体は、福岡市の他にも大分県、宮城県などがあげられる。福岡市の場合は、児童相談所とNPO、そして里親の連携が強まっていることや、里親に対するケアの向上、制度の普及や啓発などが同時進行で行われていることが委託率の増加につながっている。

朝日の社説で述べられているように、里親制度によって、親を失った子どもたちが「家庭的環境で養育」され、社会による「長期的な支援の輪」が「子どもや養育家庭を支える仕組み」をつくっていくことは、基本的には歓迎すべきことである。だが、日本での里親制度には克服すべき問題も多くあることを忘れてはならない。

たとえば、ネットで「里親」を検索してみよう。すると、検索の上位に現れるのは人の里親に関するページではなく犬や猫に関するページだ。ネット環境で物事を判断するのは危険ではある。しかし、日本で「里親」といえば、人よりも犬や猫に関するものだと一般的に認識されている可能性は否定できない。これは、日本の行政による里親制度の一般への啓発が決定的に不足していたことを示す事例だといえる。

また、里親制度について調べてみると、行政やNPOが養育する親の側への対処を優先しているように見える。たしかに、親の側に里子を受け入れる心構えや金銭的な裏付けがなければ、里親制度そのものが成立しない。とはいえ、何よりも優先すべきは里子になる子どもに対する心のケアであり、里親とのコミュニケーションがうまくいくのかどうかを長期的に見守っていく姿勢であろう。

伝統的に「家」的なものを重んじてきた日本社会では、ある家庭に他人の子どもが入り込んで生活していくことには困難がつきまとう。そんな伝統は崩壊しつつありそうなものだが、「世間」というタイトな枠組みのなかでは、いまだ形式的にその残骸が残っている。そして、その残骸によって、里子となった子どもたちが息苦しくなることも予想される。

繰り返すが、親のいない子どもを家庭環境の元で育てるという方針自体には賛同する。しかし、日本では里親制度に対する啓発が不足していることと、子ども自身がどれだけ主体として里親制度に関わっているのかという疑問が残る。行政とNPO、里親、そして地域社会が一体となり、それらを改善していく必要がある。

最後に、小5から1年間ほど里親にいったことのある筆者の経験からいうと、里親と里子のソリが合わないようなケースもありうる。里親の側には、長期的な養育を目指す一方、里子が自分の家庭に適応しているのかどうかをしっかりと見守っていただきたい。適応していなければ、そのまま無理をして養育するではなく、関係各所と相談しながら、里子に別の道を準備するような姿勢も求められているのではないか。

(谷川 茂)