ユーロ売りが止まらない。ユーロ相場は対円で、2000年12月以来の11年ぶりの安値となる1ユーロ=97円台前半を付け、対ドルでも1.28ドル台を割り込んだ。

週明けの2012年1月9日の豪シドニー外国為替市場では、午前に一時1ユーロ=97円28銭を付けて、安値を更新。前週末6日に米ニューヨーク市場が一時97円87銭を付けており、この流れを受けてユーロ売りが加速した。

「ユーロがドルより強い理由がない」

ユーロ相場は「年明け後に欧州国債入札が大量に控えていることから、市場のリスク回避の動きが目立った」(第一生命経済研究所の首席エコノミスト、嶌峰義清氏)ことから、1ユーロ100円を割って越年。2012年1月6日のニューヨーク市場はユーロが円に対して3日続落し、1ユーロ97円台後半で推移した。

5日のフランス国債の入札が「無難な結果」に終わったものの、財政が不安視されるイタリアやスペインなど国債利回りが上昇し、さらにハンガリー国債の格下げなど債務問題への不透明感が増したことで、ユーロを売る動きが広がった。

ユーロはドルに対しても続落。一時は1ユーロ=1.27ドルを割り込み、2010年9月以来、約1年4か月ぶりの安値を付けた。米国の雇用情勢が緩やかに改善する一方で、ユーロ圏の失業率は10%超(2011年11月)と高止まりが続く。こうした欧米の景気格差も、ユーロが売られやすい要因をつくっている。

経済アナリストの小田切尚登氏は、「ユーロは基軸通貨としてドルと競ってきたが、ユーロがドルより強い理由がない」と指摘。その理由を、こう説明する。

たとえば、英エコノミスト誌が試算する「ビッグマック指数」によると、ユーロ圏のビッグマックは4.93ドル(387円)で、日本(4.08ドル=320円)や米国4.07ドル(319円)よりも高い。他の物価も高く、「ユーロの価値はドルや円と比べて過大評価されている」ことになる。

懸念されるユーロ急落

経済アナリストの小田切氏は、ドル円相場が1ドル77〜78円台で推移するなかで、「1ユーロ100円前後で推移するユーロの価値は高すぎる」という。

現在ユーロは対円だけでなく、対ドルでも下げているが、「年内に大きく動く可能性はあり、1ユーロ80円台は十分にあり得る」とみている。

その可能性も欧州の債務問題の成り行き次第だが、市場関係者らが懸念するのは「急落」だ。2010年5月に、ユーロは欧州不安の高まりで120円から110円まで1日で10円下落した場面があった。

1ユーロ88円93銭の史上最安値を視野に入れる市場関係者は少なくないようだ。