お客さまからクレームを受けたときには、営業マンはまず「電話をかける」「謝りに伺う」など、直接対応してこちらの誠意を示すことが基本です。それなのに部下がメールでの謝罪のみで済ませようとしていたら、どうでしょう?

お客さまは自分の苦情に対して、真摯に受けとめてほしいと思っています。それなのに、メールを通して謝罪されて終わりでは、自分の苦情を軽く扱われていると考え、会社の誠意のなさに余計腹をたててしまいます。

非常識を頭ごなしに叱っても通じない

これでは大切なお客さまの信用を失うだけではなく、さらに大きなトラブルへと発展する可能性も出てきます。しかしここで「お客さまが怒っているのに、メールで謝ってどうするんだ!」と叱っても意味はありません。なぜそれがいけないのかが、わかっていないのですから。

大切なのは、お客さまは何か問題が起こった時には、まず会社側が直接謝りに来るのが当然だと思っている、ということを理解してもらってください。

まず、「自分の苦情に対して、『すみません』という謝罪のメールだけで処理されたら、君ならどんな風に感じる?」と尋ねてみてください。さらにここまで聞いてもわからない人が多いと思うので、

「僕だったらメールで謝ってこられたら、『反省しているんだろけど自分とは会いたくないんだろうな』と思うよ。そしてそんな人とは次からもう仕事しないと思うけど、君ならどう? メールだけで謝罪を終わらせるのは会いたくないという意思表示。本来仕事は継続していくものだから、このままそのお客さまと仕事を続けていきたいのなら、きちんと直接謝りに行った方がいいと思うよ」

と、“こうした方が君の将来にとってベターなこと”だという風に説明してあげることが大事です。

また、たいていの営業マンというものは、自分の失敗や苦情を公にすれば自分の成績に響くと考えて、上司に報告するのを嫌がります。部下がお客さまからのクレームを報告していないことが分かったとき、そうすればよいのでしょうか。

失敗を自覚していない場合は大問題

自分の失敗を自覚し、隠したがっているなら、まだましです。「叱られるのが嫌なんだな。大丈夫だ、怒らないからちゃんと言ってみろ」で、終わるかもしれません。

しかし、お客様からクレームを受けたことの重要性を理解できず、クレームを受けたことをたいしたことではないと思っているとしたら、それは大きな問題です。

たとえばこんな出来事がありました。ある中華料理店で、ある日来店していたお客様が、「頼んだ料理が30分待っても出てこない。こんなに待たされるならもう二度と来ない」と怒って帰ってしまったことがあったそうです。

何か問題や特別な出来事があったときには、必ず本部に報告するよう指示されていましたが、店長はその日の出来事を本部に報告しませんでした。

後日、そのことが本部に伝わり、マネージャーが店長に「なぜそんな出来事を報告しなかったんだ。報告しなきゃだめじゃないか」と問い詰めました。するとその店長は、

「いや、あのお客さんは『もう来ない』と言っていたので、もうどっちみち来ないでしょう。二度と来ないお客さんについて報告しても仕方ないと思ったので報告しませんでした」

と答えたのだそうです。「怒られるかと思って報告しませんでした。すみません」という返事が返ってくると思っていた本部のマネージャーはびっくりしました。

クレーム対応が大切なのは、次の仕事につなげるため

お客さまが「二度と来ない」と怒ってしまったのは、料理をお待たせしたのが原因です。ですから、「30分待たせてしまったらお客様はとても長いと感じて怒ってしまう」事実を認めたうえで、

「30分待たせてしまった原因はなんだったのか」
「どうしたら混んでいるときでももっと早く料理をだせるのか」
「長くお待たせしてしまうときにはどういう対応をしたらいいか」

など、次からお客様を待たせないようにするための手段を考えることが必要です。

なのに店長は「二度と来ないんだから気にする必要はない」と、店について悪い噂が流れるといった心配も改善策を考えることもなく、終わりにしてしまったのです。

この例からもわかるように、クレーム対応が大切なのは、次の仕事につなげるためです。対応の仕方が仕事に大きな影響を与えること、会社の将来にとっても重要であることを、理解してもらうことが必要です。

※すばる舎から2011年12月21日、「今どきの営業マン 超育成法」発売します。新人営業マンを「イライラしないで速攻育て上げる方法」を、30〜40代のリーダー向けに書きました。

高城幸司