地元幹部の腐敗や土地収用に対し住民の抗議行動が続いている中国広東省陸豊市の烏坎村で、自治組織を結成した住民側と治安当局との緊張が高まっている。18日付香港紙、明報によると、村は治安当局により陸と海から包囲され、食糧の備蓄はあと7日分しか残っていないという。17日には村人口の半数が参加するデモが行われ、幹部の腐敗糾弾や土地の返却、それに拘束中に急死した住民代表の遺体の引き渡しを訴えた。

 烏坎村では、30年以上在職する村の共産党支部書記らが村の土地使用権を勝手に開発業者に売却したことなどに対し住民の不満が高まり、9月からデモなど抗議活動が続いていた。今月に入って住民代表5人が私服警官に連行され、うち1人が拘束中に「突然死」した。

 香港紙・明報によると、烏坎村の人口は現在1万3000人。周囲には1000人以上の武装警察が配置され、道路の出入りは制限され、港も公安の船により封鎖されている。村の政府と派出所の人員は逃走して村は無政府状態となり、住民が結成した自治組織が運営している。治安当局に対抗して自主的にできたパトロール隊が24時間見張りをしているという。

 村では17日も抗議集会が開かれ、6000人以上の村民がデモ行進を行った。腐敗幹部への糾弾や「土地を返せ」といったスローガンを叫び、党中央に救済を求めた。また急死した自治組織の副理事長、薛錦波さんの遺体の引き渡しと死の真相究明を訴えた。当局は「心臓突然死」と発表したが、薛さんの遺体を確認した家族は多数の傷跡があったことから、拷問死を疑っている。

 烏坎村の自治組織によると、当局の包囲により村には食糧があと7日分ほどしか残っていない。ただ烏坎村に同情し長期抗争を支持する近隣の村から食糧支援の申し出があるという。

 中国メディアでは先週から烏坎村の抗議行動に関する報道は伝えられていない。(編集担当:阪本佳代)