先の大相撲九州場所で大関に昇進した稀勢の里について、貴乃花親方が『週刊プレイボーイ』で連載しているコラム「職人気質(しょくにんかたぎ)」のなかで触れている。

「成績は10勝5敗でしたが、内容がとてもよかったですよね。真っ向勝負っていう。関取になりたての頃から見てきましたが、頭からガツンと当たって、挟みつけるように一気に持っていく――こういう相撲を取れるのは稀勢の里しかいなかったし、当時から『将来は横綱になれる逸材』だと思っていました」

 大関はまだまだ通過点、と親方は期待をかけているようだ。また、稀勢の里が大関昇進の伝達式で「大関の名を汚さぬよう精進します」とシンプルにまとめた口上も話題になった。

 報道などで目にする横綱、大関の昇進伝達式では、力士が四字熟語を使うシーンが印象に残っているが、実はこれは旧二子山部屋の伝統。1993年、貴乃花親方が大関昇進時に「『不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で相撲道に精進いたします」と、口上に四字熟語を採り入れたのが最初。さらに翌年の横綱昇進時に、「相撲道に不惜身命(ふしゃくしんみょう)を貫く所存です」と、またもや難解な四字熟語を使い、以降これが部屋の伝統となった。

 その四字熟語の由来について、親方はこう語る。

「不撓不屈は、先代(貴乃花)が『おまえにはこの言葉が合っている』と考えてくださったものです。『どんな困難な壁もぶち破っていく不屈の精神を持て!』と。不惜身命は『命を惜しまず、相撲道に精進する』という意味で、これは俳優の故・緒形拳さんからいただいた言葉なんですよ」

 幕内優勝22回を誇る平成の大横綱も、現在は幕下4力士ほかの弟子を預かる身。弟子の相撲については、「緊張も何も、親方になって初めて先代の気持ちがわかりました(笑)。もうね、自分が(相撲を)取ったほうが全然楽ですよ」と笑う。

(取材/浜野きよぞう)

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