前回、「典型的なダメ営業マン」と題したコラムの最後で、「すっかり乗せられ成約させられた、とあるタウン誌の営業の話」に触れました。

そのことについて知人や読者から「話をもっと詳しく聞きたい」というコメントをもらいましたので、今回は私の経験を基に、成功する飛び込み営業の話を紹介しましょう。

相手に「選ばれた感」を抱かせる導入が大事

最近は実に多くのタウン誌が存在し、連日電話や訪問、メールなど、さまざまな攻め口で広告のセールスをしかけてきます。そんな彼らに何より多いのは、勉強不足、事前調査不足が明らかな営業です。

当店は「HOT(スパイシー)なメニューで、HOTな熊谷の街おこしをしよう」をキャッチフレーズに、いわゆるオリジナルな「ジャパニーズカレー」を売りとしています。それなのに、来店していきなり、

「インドにはよく行かれるんですか?」

と見当違いな質問をしてみたり、ひどい人になると開口一番、「あー、カレー屋さんなんですね?」とか平気で口にする始末。そんな営業の話は、こちらも全く耳に入らなくなるので、早々にお引き取り願っています。

例のタウン誌の彼は、「この店のカレー、煮込んだ鶏肉がルーにたくさん入っていて本当においしいですよね」と切り出しました。「私、一度食べているんです」というアピールです。

飲食店経営者は、自分の店のメニューに自信を持っていますから、「それを認識した上でうかがっています」という姿勢は、たとえ飛び込みであっても「選ばれた感」を抱くので、とても気分よく話が聞けるものなのです。

もしかすると彼は、実際に当店のカレーを食べていないのかもしれません。しかし、同僚や部下から聞いた話を自分の体験のように話すのも、ボロが出ない限りOKです。

客観性ありげな「ネットの口コミ」は使える

事前知識を仕入れるためには、客としてお店を訪問するのが一番ですが、ネットを検索して予備知識を入れるのも効果的です。お店のホームページを見るのは基本中の基本ですが、ネット上の「利用者の口コミ」もけっこう役に立つものです。

タウン誌の彼も、「とあるブログの『カレーで街おこし、熊谷の新名所に』という記事で、こちらのお店が取り上げられていましたよ」と、クリアファイルから記事のコピーを取り出しました。

私も知らないブログを教えてくれて、「そんなお店に、ぜひうちの紙面にも登場願いたいと思いまして」というのですから、耳を傾けないわけにはいきません。ここでのポイントは、クライアントの気持ちを盛り上げる次の3点です。

(1)ホームページだけでなく「ブログなども調べています」という熱意表明
(2)手当たり次第ではなく「この店を選んで訪問しています」と持ち上げながら依頼
(3)クリアファイルに当店の名前の書かれたテプラシールを貼り、「力入れて調査済」とアピール

具体的なセールスでは、「肯定口調」を貫くことが大切です。「ここがダメだからこういう工夫をしましょう」とか「今のやり方だとお客さんが増えないのでこういう広告をおススメしています」とか、現状のやり方を否定して売り込むと失敗します。

店主やオーナーは、少なからず自分のお店やサービスにプライドをもっています。白々しいほど持ち上げても大丈夫ですが、「落とし」はご法度です。仮に否定口調の指摘が当たっていたとしても、気分が良いはずもなく、「じゃ、やってみるか」とならずに、気分を害して「もういいよ」となりがちなのです。

「限定感」は最後のひと押しに取っておく

タウン誌の彼は、確かこんなトークでした。

「こんなにおいしくてネットでも人気のお店を、もっと多くの人に知ってもらったら、街おこし機運にも勢いがつくんじゃないですか。ぜひうちも応援させてください!」

ググっと引き寄せられますね。締めは「限定感」。「特別枠を用意しました。3日間仮押さえします。その間にご決定を」というわけです。ただし、このくだりをセールスのツカミで持ってきて、

「こんにちは〜。いま限定サービスやってるんですが、いかがでしょうか?」

と先走る営業がいますが、それはハナから値引きの話をするのと同じで効果が出ません。

自分の事をよく研究してきた相手が、自分を評価し、さらに自分にプラスの効果が見込めるセールスしていると分かった段階であればこそ、「限定感」が活きてくるのです。

業種を問わず成績優秀な営業マンは、「相手のプライドを上手にくすぐることが営業の極意」と口をそろえます。相手をよく調べ、よくほめ、特別扱いして、ひと押しすること。私もこのやり口に、すっかりオーナーとしてのプライドをくすぐられたというわけです。

※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。

大関 暁夫