今年納めの九州場所で大関取りがかかっていた稀勢の里が、千秋楽の11月27日、ライバルの琴奨菊に敗れ昇進ラインの11勝に届かなかったにもかかわらず、大関に昇進することとなった。実はこの昇進、すでに14日目に平幕の栃乃若に勝ち、10勝目を挙げた時点で決まっていたのだという。
 「これまで数字に強くこだわっていた審判部が突然、軟化したのです。三保ケ関副部長(元大関増位山)などは、別に勝ち数にこだわる必要はない内容だ、と言い出し、千秋楽の午前中に部会を開いて琴奨菊戦の結果を待たずに稀勢の里の大関昇進をさっさと決めてしまった。それも満場一致です。貴乃花審判部長も、場所前に師匠を亡くすという不幸に見舞われたのに、よくここまで10勝したとベタ褒めでしたよ」(担当記者)

 なぜ手のひらを返したようにハードルを下げたのか。九州場所の客の入りや優勝争いの展開をみれば一目瞭然だ。
 八百長問題や場所前の弟子暴行疑惑などの不祥事の影響があったとはいえ、入りが去年を上回ったのは11日目と千秋楽のたった2日だけ。さらに13日目には白鵬の優勝が早々と決まってしまうなど、対抗馬不足をまざまざと露呈し、
 「12日目を終えて大関が3つも差をつけられてはなあ。4人もいるんだよ」
 と放駒理事長も溜め息をつく始末。こうしたことを解消できる目玉力士を、早急に作ることが大相撲界の急務だったのだ。

 それにしても、完敗して大関の座を射止めるとは何とも後味が悪い。支度部屋に戻ってきた稀勢の里は悔し涙をこぼし、
 「(大関昇進が決まって)師匠にはいい報告ができる。感謝の言葉を述べるつもりだけど、立ち合いや、二の矢、三の矢の攻めがまだまだ。来場所はもっと鍛えていい相撲を取りたい」
 とコメントしたのは取組後20分以上も経ってから。

 大相撲界の人材難はここまで深刻。稀勢の里の昇進でも状況が改善しなかったら、どうするつもりなのだろうか。