「本は面白いということが伝われば」 三上延さんインタビュー(3)

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 新刊JPがお送りする、出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』。今回は、現在72万部を突破し、ベストセラーとなっている『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ(アスキー・メディアワークス/刊、現在2巻まで刊行)を執筆している三上延さんです。
 これまで幅広い作風で活躍されてきた三上延さんですが、今作は“ビブリオ・ミステリ”。古書店を舞台に、個性豊かな登場人物と人々の想いが詰まった古書たちが物語を織り成します。
 3回にわたってお送りするインタビュー、最終回では作品を貫くテーマのほか、三上さんが影響を受けた3冊の本をご紹介いただいています。

■高校生時代「こんな書店員がいればいいのに…」と思っていた

―三上さんが小説を執筆する上で、常に一貫して持ち続けているテーマはありますか?

「いろいろなジャンルの小説を書いているので、一貫したテーマははっきりとは無いんですよ。ただ、やはり読者の皆さんにお金を払ってもらって買っていただいているわけですから、ちゃんと楽しんでもらえるような話、次のページをめくりたいという話にしようというのはいつも思っています」

―2巻の「あとがき」で「物語はようやく本編というところです」とおっしゃられています。読者からみれば、これからまた新しい展開が待ち受けているのではないか気になるところですが、今、お考えになっている構想をお話いただける範囲でお願いできますか?

「このシリーズを読まれている方ならお分かりかと思うのですが、キーパーソンがヒロインである栞子の母親になっていくので、その謎が少しずつ解き明かされていくような感じになると思います。また、大輔と栞子の関係もそうですし、2人が古書店員として、そして人間として成長していく話でもあるので、いろいろな事件を通して2人の関係や人格が少しずつ変化していく過程を描ければいいなと」

―そう考えると、『ビブリア古書堂の事件手帖』はいろいろな要素がありますよね。ミステリでもあるし、恋愛小説的な部分もあります。またもちろん、登場人物たちの成長も1つのドラマですが、この作品の中で一番比重を置いているのはどの要素ですか?

「やはり『ビブリア古書堂の事件手帖』は、本が好きということが全体を貫くテーマですから、本が好きな人にはもっと好きになって欲しいし、本が苦手な人にはこの小説を通じて興味を持ってくれると嬉しいですよね。とにかく本は面白い、それですかね」

―これは私個人の感想なのですが、栞子さんのキャラクター、本が好きでやたら詳しいけれど、超人見知りで恥ずかしがりやという性格が結構ツボなんです。そういう人は多いと思うのですが、栞子さんのキャラクターは三上さんの理想のタイプだったりするのですか?

「いや、そういうわけではないですね(笑)。僕が高校生くらいのときに、こういう書店員さんがいたらいいなという妄想の具現化で、今の自分の理想かというと、そうではないです。読者にとっても、魅力的なキャラクターとは何か、突き詰めていった結果、こういう人物になったという感じですね。もちろん、僕にとっても魅力的ではあるんですが(笑)」

―また、もう1人、小菅奈緒もツボでした。ああいう風にひょんなことから本に興味を持って、詳しい話を聞く姿勢もそうですし、そういったところで成長していく姿は読んでいて楽しいです。

「それは嬉しいですね。特に奈緒くらいの若い子だと、何かのきっかけで急に本を読み始める気がするんですよ。これからまた奈緒が出てくる予定なので、彼女の成長や変化を描けるといいなと思いますし、奈緒に限らず、1巻と2巻で取り上げた人物も別の本をテーマに据える中でまた出したいと考えています。物語を日常に引き寄せて書いていますが、それぞれに生活があって、物語に出てこなくても少しずつ変化しているはずなので、そういうこともきちんと描ければいいなと思っています」

―三上さんが人生で影響を受けた本を3冊ほど、ご紹介いただけますか? いわゆる栞子さんにおける『晩年』みたいな本ですね。

「3冊にしぼるのが大変ですね(笑)。まず1冊目が内田百けん(もんがまえに「月」)の『實説艸平記』、2冊目がガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』、最後の1冊が久生十蘭の『昆虫図』で、これは教養文庫から出ている短編集です。この3冊はずっと読んでいますね」

―作家を志すきっかけとなるような本はこの3冊の中にありますか?

「そうですね…。『予告された殺人の記録』は、マルケスはもともと好きだったのですが、高校生くらいのときにこれを読んで今でも印象が強く残っていますね。ちょうど僕が高校生のときだった80年代の後半ってラテンアメリカ文学ブームが続いていて、その中でもマルケスは一番の人気でした。僕は『エレンディラ』という中編から入って、その後、『百年の孤独』を経て、『予告された殺人の記録』を読んだのですがこれはすごい、と」

―では、最後にこのインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

「本は面白い、ということが少しでも伝わればと思っています。そして、この小説をきっかけにいろいろな本を手にとっていただけると嬉しいですし、このシリーズの続編も手にとってもらえればなお嬉しいです」

■取材後記
 今回お話をうかがった三上さんは、筋金入りの“本好き”。シリーズ累計72万部のベストセラーとなった『ビブリア古書堂の事件手帖』ですが、この作品を通して本は面白いということを伝えたいとおっしゃられていました。
 今回は文量の都合で割愛させていただきましたが、古書店で出会ったレア作品などのお話など、古書店で働いていたからこそ得られる本についての知見が豊富で、和やかな雰囲気でのインタビューとなりました。そして、『ビブリア古書堂の事件手帖』の続編、期待です!
(新刊JP編集部/金井元貴)



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