今週12月8日、〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉の創刊第一弾、スコット・ウエスターフェルド『リヴァイアサン--クジラと蒸気機関--』が刊行される。叢書名に"新"とついていることからわかるとおり、これは、かつて"銀背"の愛称で親しまれた〈ハヤカワ・SF・シリーズ〉の21世紀バージョン。

 旧〈ハヤカワ・SF・シリーズ〉は、〈ハヤカワ・ミステリ〉(通称ポケミス)の姉妹叢書として1957年に創刊された。第一弾は、ジャック・フィニイ『盗まれた街』とカート・シオドマク『ドノヴァンの脳髄』。以後、フレドリック・ブラウン『火星人ゴー・ホーム』、レックス・ゴードン『宇宙人フライディ』、リチャード・マシスン『吸血鬼』......と続き、1974年11月のハリイ・ハリスン『殺意の惑星』まで、全318冊を刊行している。
 その後、銀背の本格SF路線は、ハヤカワ文庫SFの"青背"に引き継がれ、ポケット版のSF叢書は長く途絶えていたが、今回の〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉で37年ぶりに復活することになった。

 背の色は旧シリーズと同様、伝統の銀色。本の小口天地は、これまた旧シリーズと同じく(1冊1冊、手塗りで)茶色に彩色され、背のSFマークや扉のデザインも旧シリーズを意識したものとなっている。ただし、ビニールカバーは、現在のポケミスと同様のつるつるバージョン。旧版そのままの復刊というより、「〈ハヤカワ・SF・シリーズ〉が今も続いていたらこうなっていたんじゃないか」的なデザインだ。

 創刊第一弾の『リヴァイアサン』は、2010年度のローカス賞とオーリアリス賞をそれぞれヤングアダルト部門で受賞したスチームパンク巨編。遺伝子改造した奇怪な生物たちを兵器に改造するダーウィニストと、二足歩行メカや巨大飛行メカを擁するクランカーとが鎬を削る(パラレルワールドの)第一次世界大戦を舞台にした少年少女の痛快冒険娯楽SFだ。
 題名のリヴァイアサンは、クジラを改造した巨大飛行船。要は「サクラ大戦」の世界大戦バージョンだと思えば当たらずといえども遠からずか。これが三部作の第1作で、残る2冊、『ベヒモス』『ゴリアテ』も〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉から続刊予定。第3部ではいよいよ日本も参戦し、リヴァイアサンは東京へと向かう......。

〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉は、いまのところ、全10冊の刊行がアナウンスされている。〈リヴァイアサン〉三部作のほか、『ねじまき少女』で今年の翻訳SFの話題を席巻したパオロ・バチガルピの第一短篇集『第六ポンプ』、2047年のインドを舞台にしたイアン・マクドナルドの連作短編集『サイバラバッド・デイズ』、今年度ヒューゴー/ネビュラ/ローカス賞の長編部門トリプル・クラウンを達成したコニー・ウィリスの二部作『ブラックアウト』&『オールクリア』、フィンランド生まれの新鋭、ハンヌ・ライアニエミの第一長編『量子怪盗』、SF賞5冠に輝く『都市と都市』の邦訳が今月刊行されるチャイナ・ミエヴィルの最新SF長編『エンバシータウン』、クリストファー・プリーストの《ドリーム・アーキペラゴ》シリーズ最新作『アイランダーズ』......というラインナップ(詳細は早川書房の公式ページ http://www.hayakawa-online.co.jp/ginze/参照)。
 37年ぶりに復活した"銀背"がはたして今の読者にどう受けとめられるか、楽しみだ。

 なお、来る12月10日(土)15時から、〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉創刊記念トークショーが、東京・秋葉原の書泉ブックタワー9Fイベント・ホールにて開催される。出演は、早川書房の塩澤快浩編集部長と清水直樹〈SFマガジン〉編集長および大森望。
 入場無料。当日店頭で『リヴァイアサン』もしくは『21世紀SF1000』(大森望/ハヤカワ文庫JA)を購入すると入場できる(詳細は、http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000490 参照)。なお、書泉ブックタワー8Fでは、〈SFマガジン〉バックナンバーフェアおよびサイン本フェアも開催中とのこと。

(大森望)







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