ませガキ的、読書道

 自称、おちゃらけ社会派。2005年春に開設した、時事ネタや政治ネタを中心に綴る「Chikirinの日記」は、匿名ブログでありながら月間100万PVを誇るモンスターに成長。さらに今年2月には、著書『ゆるく考えよう』をイースト・プレスより刊行。11月には2冊目の著書となる『自分のアタマで考えよう』がダイヤモンド社から発売された。Chikirinさんって一体何者!? 彼女の読書遍歴から正体を探ってみよう!

 「小中学生の頃は、本当に本が好きでした。同級生がみんな校庭でドッジボールしたりして遊んでいるなかで、休み時間もずーっと教室で本を読んでいるような子供。あらゆるものを読みましたが、小さな頃に大好きだったのはファンタジー」(Chikirin)

 佐藤さとるさんの『コロボックル物語』を読み、絶対コロボックルはこの世のどこかにいる! と信じていた女の子。他にも、『メアリー・ポピンズ』や『モモ』など、海外もののファンタジーも好きだった。同時に『シャーロック・ホームズ』シリーズや、アガサ・クリスティ、松本清張などの推理小説を読破し、少し大きくなった頃にはサガン(代表作『悲しみよこんにちは』やデュラス(代表作『愛人』)等の女流作家を好んでいた。

 「サガンやデュラスは小説の中身もですが、ご本人の生き方自体が格好いいんですよね。どちらも1900年代の前半生まれ。すごく昔の方なのに、本当に自由に生きていて、どうやったらこんなに自由になれるの?と思うほど、社会の制約やあるべき論、常識にとらわない生き方でした。その生き方は、作品はもちろん、エッセーの方により色濃く表れていて思春期まっただ中だった私は心から感動しました。」

 完全に文学少女! なおかつ小学校5年生の頃からは、毎日2〜3時間かけて新聞の朝刊夕刊を隅から隅まで読破するのが日課に。おちゃらけ社会派の片鱗が現れ始める。

 「中学校に上がる前くらいから、社会的なことやリアルな世の中の出来事に興味を持つようになりました。その現実社会、世の中がどう動いているかを"小説"という形で教えてくれたのが、山崎豊子さんでした」


 "初・山崎豊子"は、小学6年生の時に読んだ『華麗なる一族』。数年前にキムタク主演でドラマ化もされた、1974年刊行のベストセラー小説だ。

 「鉄鋼会社や銀行を所有する財閥グループのお話で、経済小説でもあるけれど、財閥内の愛憎関係や人間関係を描いた人間小説でもあります。正妻の他に愛人も一緒に住んでいるという銀行頭取の話も出てきたり。正直小学生が読むような本ではないですが、読書感想文のテーマに選ぶくらい好きでした」


 ご本人曰く「早め早めの本ばかり読んでいるませガキ(笑)」。その後の懇親会の時には「もうちょっとお嬢さんが読まれる本に気を遣われた方がいいんじゃないですか?」と、先生からお母さんに注意がいったらしい。

 「新聞や山崎豊子さんの本を読み始めたりした時に、現実社会と自分が学校で先生から教えられていることとのギャップの大きさに気がつきました。その頃から、学校についていけなくなってしまったんです。学校って嘘ばっかりというか、現実世界とかけ離れたことを教えますよね。もしくは現実社会に触れないように教える。歴史にしても現代社会にしても、"みんな仲良くしましょう!"みたいな建前的なかけ声ばかりです。世の中ではもっといろんなことが起こっているのに、なんで私はこんな箱庭みたいな世界の中で"勉強しなさい"とか言われてるんだろうって不満でした。とはいえ『華麗なる一族』はやっぱり小学生が読むような本ではないですね。今から思えば酷いかなとは思います(笑)」

 化粧して男の子と付き合って授業バックレてる小学生女子とは完全にベクトルが違う、本質的なガチの"ませガキ"だったChikirinさん。ちょうどその頃、現在の「Chikirinの日記」へと繋がる一冊の本との出会いもあった。
 
 「小学校5年生の時に読んだ、高野悦子さんという方の『二十歳の原点』。高野さんはプロの作家さんではなく、1970年代に立命館大学に通い、20歳で自死をされた女子学生さんです。この本は、高野さんが大学、高校生時代に書かれていた日記を、亡くなられたあとでお父様が本として出版されたもの。下宿先でのこと、恋愛のこと、アルバイトのこと、そして当時激しかった学生運動のこと。ちょっと悪ぶってお酒や煙草を試してみたりしていた大学生の時。日記なので人に読まれることをまったく意識せず、自身のことを赤裸々に書かれているのですが、素人の方が書いた文章にこれだけインパクトがあるんだ!というのが本当に衝撃でした。当時私は、大学生になったら東京に行きたい、一人暮らしをしたい!と思っていましたが、まさに自分が憧れていた"一人暮らしで学生生活を送っている"女性が、生きることをやめるという決断をされたことにまず驚愕。そして、いわゆる芸術作品でも、誰かを感動させようと思って書かれたわけでもない文章に、ものすごいインパクトがあるという事実に衝撃を受けました」

 この本を読んだ後、「自分も文章を書いてみたい!」と、Chikirinさんは日記をつけ始めた。小学校5年生の終わり頃から付けているその日記が、紙からブログへと形を変えたのが「Chikirinの日記」。『二十歳の原点』は、ある意味でChikirinさんの人生を変えた一冊でもあるのだ。(後編に続く)

 後編はChikirinさんの"座右の書"のお話! お楽しみに!



(プロフィール)
Chikirin(ちきりん)
2005年に開設したブログ「Chikirinの日記」を書いている、正体不明のおちゃらけ社会派ブロガー。関西出身、東京在住。バブル最盛期に証券会社で働き、米国へのMBA留学を経て外資系企業に勤務。昨年秋に早期退職し、現在は"働かない人生を謳歌中"。著書に『ゆるく考えよう』(イースト・プレス)、『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社)。







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