作家デビューしやすい公募文学賞

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 読売新聞東京本社と清水建設が主催し、新潮社が後援している文学賞「日本ファンタジーノベル大賞」の決定記念トークショーが11月25日、東京・新宿のブックファースト新宿店で行われた。
 1989年に創設され、これまでに森見登美彦さんや池上永一さん、鈴木光司さん、畠中恵さん、恩田陸さんなどの人気作家を生み出してきた同賞。第23回となる今回、大賞に選ばれたのは勝山海百合さんの『さざなみの国』、優秀賞は日野俊太郎さんの『吉田キグルマレナイト』
 今回のトークショーは「作家になること、書き続けること」をテーマに、勝山さん、日野さんに加えて、第13回大賞受賞者で、『終わり続ける世界のなかで』を刊行したばかりの粕谷知世さん、司会を務めた文芸評論家の大森望さんの4人で行われた。
 
 「ファンタジーノベル」の定義は難しく、幅広い解釈が可能なため、同賞に応募される作品の多様さは数ある公募文学賞の中でも屈指。
 今回の受賞者二人も、同賞に応募した理由について、「幅広い作品を扱っている賞なので」(日野さん)、「入選するとしたらファンタジーだと思っていた。ホラー系の賞という選択肢もあったが、怪談のように怖さを求めなくてもいいから」(勝山さん)と、多様な小説を広範囲にわたってカバーする同賞の懐の深さを挙げていた。
 
 また、この賞は応募規定によると原稿用紙300〜500枚とかなりの長さが必要だが、勝山さんはすでに、他の公募新人賞での入賞歴があり、昨年早川書房から長編『玉工乙女』を刊行したこともあって、問題はなかったそう。そして、受賞作が初めて書いた小説であったという日野さんも、「書かずにいられない衝動のまま」と、長さ自体はそれほど苦にはならず、むしろ、公募新人賞でおなじみの「原稿用紙換算」の方法がわからずに、書きあげたものを大幅に削ることの方が大変だったそうだ。
 
 今回、大賞を受賞したことで、二人は本格的な執筆活動に入っていくことになるが、司会の大森さんが「新人賞を取るよりも、作家としていろいろなところからの注文を受けながら小説を書き続けていく方が難しい」と語っていたように、文学賞を受賞したからといってその後の地位が保証されるわけでは決してない。
 日野・勝山両氏が今後どのような作品を残していくのか、真価を問われるのは次作以降、ということになるが、トークショーの終盤では勝山さんが早くも次回作の構想の一端について語り、大森さんが日野さんに対して「(大学の先輩の)万城目学だったら抜けるでしょ?」と切り込むなど、両名の作家としての旺盛な創造力や可能性が垣間見えるイベントとなった。
  

 「日本ファンタジーノベル大賞」は未発表の創作ファンタジー小説を公募(プロ・アマは問わない)。候補作には挙がったものの、入賞していない作品でも、優れていると判断されたものに関しては刊行される可能性もある、という点では、作家を志す者にとってはデビューへの足掛かりを作りやすい賞だといえる。
(新刊JP編集部/山田洋介)


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