「いちエフ」では実際、何が起きていたのか?

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 東日本大震災、そして福島第一原発の事故から半年以上が経ちました。
 いまだこの件に関する報道は多いものの、徐々に事故発生当初の緊迫感はなくなり、同時に国民の関心も薄れてきた感があります。
 しかし、事故によって避難を余儀なくされ、生業を奪われた周辺住民は、いまだいつ終わるともしれない苦しみの中にいます。
 『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(たくきよしみつ著、講談社刊)は福島第一原発から25kmの川内村に暮らしていた作家が、事故直後から現在にいたるまでの経過を綴った迫真のドキュメント。災害から数か月が経って、マスコミでは、あまり報道されていない様々な問題が浮き彫りにされていきます。

■仮払金の不公平
 当然のことながら、原発事故によって避難生活を余儀なくされた住民に対しては補償金が支払われますが、その支払いの基準が大きな問題となっています。
 最初に決まった仮払い金は1世帯(2人以上の世帯)当たり100万円、単身世帯には75万円というもの。しかし、これでは親・子・孫の3世代家族も、子どものいない夫婦2人だけの世帯も同額の100万円ということになってしまいます。
 また、入籍していない同棲カップルは「単身家庭(75万円)×2」とみなされるので、入籍している夫婦(100万円)よりも多くの仮払い金を受け取れることになるため、これはあまりにも不公平な支払い基準だといえます。

■避難所太りする人々
 住んでいた家を立ち退かされ、避難所暮らしをせざるをえなくなった方々は気の毒だというほかありませんが、避難所にいれば三食無料で食べられて何もしなくていいということで、仮設住宅に移ることを拒否して集団避難所で暮らし続ける人もいたようです。加えて、集団避難所に長くいた方が補償金や慰謝料が多く支払われるという噂が立ったことも、人々が仮設住宅に移りたがらない理由の一つでした。
 実際、この噂は正しく、8月になると東電から「避難等にかかる追加仮払い保障金のお支払基準」が示され、この内容はまさしく避難所生活の長さによって金額を定めたものでした。
 彼らを責めることはできませんが、年老いて動けない親を抱えていては避難所生活は無理だと判断してすぐに自宅に戻り、物資不足に耐えながら生活していた人よりも、避難所で3食つきの生活をしていた人の方が多くの補償金をもらえるというのは、やはりおかしいのではないかとたくき氏は指摘します。

■仮設住宅は無駄だらけ
 震災直後は仮設住宅が足りないという状態でしたが、震災から数ヵ月経って整備され始めると、今度はそれらが余るというチグハグなことも起こっています。
 これは「みなし仮設住宅」制度の決定が遅れたことが大きな原因だといえます。
 「みなし仮設住宅」とは民間の賃貸住宅や公共保養施設を仮設住宅として認めて補助金を出すという制度。初めからこの制度を決めていれば、仮設住宅がだぶつくなどという事態にはならなかったとたくき氏はいいます。

■支給された家具を売って現金化する人々
 仮設住宅や、みなし仮設住宅に関しては「家具6点セット問題」も明るみに出ています。
 これは仮設住宅やみなし仮設住宅に入居した世帯に、日本赤十字から無償支給される洗濯機・冷蔵庫・テレビ・炊飯器・電子レンジ・電気ポットを売り払って現金化してしまう例が出ているという問題です。
 中には、6人家族が2人ずつ分かれて3軒の仮設住宅に申し込み、家電6点セットを3組もらって、2組を売却して現金化したという話もあるそうです。
 「家具6点セット」は海外からの義援金が原資となっているため、この現象は家電がきちんと被災者に行き渡らないということだけでなく倫理的な問題も孕んでいるといえます。
 この問題は被災者の間では必ず話題に上るそうですが、たくき氏は未だにメディアがこの件を報道しているのを見たことがないそうです。

下手な除染は被害を拡大させる
 福島は、放射性物質という見えない汚物で、土、空気、水を汚されてしまった。
 裸になって汚れを落としたくても、普通の泥汚れのように簡単ではない。放射性物質は水で流しても燃やしても消滅することはない。移動・拡散するだけだ。
 水で洗い流せば、使った水が新たに汚染され、別の場所に放射性物質を運ぶ。
 焼却すれば、体積が減った分、焼却灰の中に高い濃度で放射性物質が残る。
 セシウムが付着した表土を剝ぎ取れば、その地面の線量は下がるが、表土だけ集めた土はさらに高い放射線を発する汚染源になる。(本文P302より)


 そう、まさに「除染」など出来ないのです。
 『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』では、福島で暮らしている著者だからこそ見える、被災地の悲惨な現状が次々明らかにされていきます。
 被災地に関するマスコミ報道が手薄になり始めている今だからこそ、そこで暮らす人々の過酷な現実、そして、彼らが本当に求めていることに目を向けていたいものです。
(新刊JP編集部)



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