無実の罪で164日間勾留の村木氏が語る検察調書のデタラメ

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 警察および検察の取り調べを可視化すべきか否か、という議論がここ数年盛んになっていますが、その契機の一つとして挙げられるのが、障害者郵便制度悪用事件(凛の会事件)です。
 まだ記憶にあたらしいこの事件は、自称障害者団体の「凛の会」(現白山会)が2004年頃から格安郵便を使える障害者郵便割引制度を悪用して、障害者団体の定期刊行物を装い、家電量販店や紳士服店などのダイレクトメールを「心身障害者用低料第三種郵便物」として違法に発行していた、というものです。
 この件に関与したとして逮捕されたのが、当時厚生労働省雇用均等・児童家庭局長であった村木厚子氏でした。
 凛の会は前述の「心身障害者用低料第三種郵便物」を発送する際、日本郵政公社(当時)に同会が障害者団体であることを示す証明書を提出していましたが、これが虚偽の証明書だったことが発覚し、村木氏にはその偽の証明書の発行を指示した疑いがかかったのです。
 
 多くの方がご存じの通り、後に村木氏は無実が証明され、釈放されるのですが、その際に大きな話題となったのが「証拠偽造」「取り調べメモの破棄」といった検察の不当な取り調べでした。

■ストーリーありきで取り調べを進める検察
 村木氏がこの事件についてつづった『あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ』(日経BP社/刊)には、いつの間にか検察がストーリーを作り上げ、それに照合するような供述を村木氏から取ろうとしていた様子が書かれています。

 検察の取り調べは、検事に聞かれたことに対して村木氏が答えるという形式で行われました。検事はそれをメモし、メモをベースに供述調書を作ります。しかし、実際の村木氏の発言と調書の内容には大きな開きがあったようです。

 「凛の会」の倉沢邦夫元会長について聞かれた時、村木氏は

「私は会った記憶がないのですが、仕事では多くの方に会いますので、会っていないとは言いきれません。ただ、怪しい団体だと分かっていて証明書を発行することはありませんし、特定の議員の指示を受けたこともありません」

 と答えたそうですが、出来上がった調書には

「私は倉沢元会長に会っていません。凛の会も知りません」
 
 と書いてあったそうです。そこまで断定していないと抗議しても、検事は訂正してくれなかったので思わずその調書にサインしてしまった、と村木氏は語っています。

 また、村木氏の元部下で、彼女が偽の証明書の発行を指示したとされる上村勉氏について、検事が

「上村さんは一生懸命話してくれます。嘘をついているとは思えない。上村さんは真面目な方ですね。」と言ったので、村木氏が「そうですね」と答え、「上司から言われてやったことで、彼が追いつめられたらかわいそうですね」という問いかけに「もしそうだとしたらかわいそうですね」と返すと、その後出来上がった調書は

「私は今回のことに大変責任を感じています。私の指示がきっかけで、こういうことが起こってしまいました。上村さんはとても真面目な人で、自分から悪いことをするような人ではありません」
 と、まるで村木氏が罪を自供するかのような内容になっていたといいます。

 村木氏は、この調書にサインすることを拒みましたが、臆病な人や気の小さい人なら自分を守るために事実と違う調書にサインしてしまうかもしれない、と述べています。

 不当な取り調べに遭いながらも自分の信念を貫いた村木氏。
 『あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ』には、この事件の顛末や、村木氏が取り調べや勾留といった極限状態をなぜ耐え抜き、無罪を勝ち取ることができたのかが書かれています。 
 本書は、検察の不当な取り調べが横行する現状に対する警鐘であるとともに、困難に突き当たっている人や自分に自信がない人へのエールとなるはずです。
(新刊JP編集部/山田洋介)


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