昨年新設された山田風太郎賞は、直木賞未満の作家のエンターテインメント小説作品(長編、短編集、連作短編集)を対象とする文学賞。選考委員は、赤川次郎、京極夏彦、桐野夏生、重松清、筒井康隆の5氏(五十音順)。
 前回の貴志祐介『悪の教典』に続き、第2回受賞作には、高野和明『ジェノサイド』(角川書店)が選ばれた。
 受賞作『ジェノサイド』は、刊行直後から、スケールの大きなジャンル・ミックス型のエンターテインメントとして口コミで評判が広がり、直木賞は逃したものの、30万部を超えるベストセラーになっている。
 選考委員代表で登壇した桐野夏生氏は「厳しい現実に拮抗するためにも、小説はより強度を持たなければならない。受賞作はそれにふさわしい長編」と絶賛した。

 第31回横溝正史ミステリ大賞を『消失グラデーション』で受賞した長沢樹氏は、
「受賞後、高校時代につきあっていた彼女から出版社宛てに手紙が届いた。18歳のときにフラれてから24年ぶりの連絡で、正直、横溝正史ミステリ大賞を受賞したときよりうれしかった」と述べ、場内を爆笑の渦に包んだ。

 第18回日本ホラー小説大賞は、堀井拓馬『なまづま』が長編賞、国広正人『穴らしきものに入る』が短編賞をそれぞれ受賞。
 堀井氏は、「緊張のあまり、てのひらがヌメリヒトモドキみたいになってます」と前置きしてから、「私には人に愛される才能があります。いろんな人が私を愛してくれています。その私がつくった『なまづま』がいろんな人に愛される機会をつくっていただけて、たいへんうれしく思います」と喜びを語った。

(大森望)







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