“生え抜き”が活躍するチームの教育法

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 勝利か、育成か。選手を育てようと思えば、試合に勝てない。試合に勝とうと思えば、若手を育てられない。育てながら勝つというのが理想的だが、この2つを両立させることはなかなか難しい。
しかし、この2つを上手く両立させているのがFCバルセロナだ。

 「勝利か育成か」のテーマについて、『FCバルセロナの人材育成術』(アルベルト・プッチ・オルトネーダ/著、村松尚登/監修、井上知/翻訳、アチーブメント出版/刊)の著者であり、現在FCバルセロナの下部組織のテクニカルディレクターを務めているアルベルト氏は「勝利と育成は決して矛盾するものではない。両立できる」と断言する。
 現にFCバルセロナは、所属リーグであるリーガ・エスパニョーラで2010―2011シーズン優勝し、3連覇中。UEFAチャンピオンズリーグも優勝しており、世界で最も強いといっても過言ではないクラブだ。
 何よりも特徴的なのがシャビ、メッシ、イニエスタ、セスク、プジョル、ピケ、ブスケッツ、ビクトル・バルデスといった現在のレギュラーメンバーは、いずれもFCバルセロナのカンテラ(下部組織)育ちだ。なぜ、FCバルセロナは生え抜きの育成に成功しているのか。本書では、メッシやプジョル、イニエスタといった選手の言葉の引用も用いて、アルベルト氏が、若手選手の育成において何が重要なのかを説いていく。

 FCバルセロナは、トップチームからカンテラの最年少カテゴリーまで、全く同じ戦術、同じシステムで戦う。これにより、トップチームで採用している戦術やシステムだけでなく、FCバルセロナのトップチームの一員として必要とされるメンタリティーもカンテラで教え込まれていく。
 毎年、カンテラにはアルゼンチンやブラジル、カメルーン、そして日本からも、たくさんの外国人の思春期前の子どもが、母国と家族から離れて入団する。なので、子どもたちを育成するに当たり、指導者にとって第一の使命は少年たちの総合的な教育であり、良いサッカー選手に育てることは二番目となる。この二つの利害が衝突し「勝利か、育成か」と議論になるが、アルベルト氏は「私が勝つことが好きだし、育てることにも情熱を抱いているが、何よりもまず敬意と品格という普遍的な価値観を基本として競い合うことの素晴らしさを子どもたちに教えたい」という指導者としてのスタンスを決めたのだという。

 このような育成環境で少年期を過ごし、現在トップチームで活躍している選手の一人が、アンドレス・イニエスタだ。1996年、12歳でFCバルセロナのカンテラに入団し、2002年、トップチームに召集され、現在世界で5本の指に入る最高レベルの選手として活躍しているイニエスタは、「チーム内で大切なのは『敬意』だ。友情よりもずっと大切なことだよ。どんなに仲良くなったとしても、チームメイトの間には必ず敬意がなくてはいけない。そうじゃないと、集団が機能して勝利することはできないからだ」と語る。
 育成と勝利の両立を目指すFCバルセロナのカンテラでこのような価値観の大切さを教わったことで、人としても、サッカー選手としても、素晴らしい選手に育つことができたのではないだろうか。

 指導者、保護者の人は、子どもたちにサッカーの選手としての成長だけではなく、人としての成長も望んでいることだろう。メッシやイニエスタのようなスーパースターが育った環境や育成方針から学べることは多いはずだ。
(新刊JP編集部)



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