11月24日、今年で23回を迎える日本ファンタジーノベル大賞(http://www.shinchosha.co.jp/prizes/fantasy/)の贈賞式が、東京・大手町のクラブ関東で開かれた。

 同賞は、読売新聞東京本社と清水建設が主催する公募新人賞。受賞作は後援の新潮社から単行本化される。恩田陸、森見登美彦の活躍や、畠中恵『しゃばけ』(第13回優秀賞)がドル箱シリーズに成長したこともあって、このところ注目度が高い。

 応募総数695本の中から栄冠を射止めた今回の大賞受賞作、勝山海百合『さざなみの国』は、一匹の猫を連れて村を旅立った"さざなみ"という男の子の冒険を描くチャイナ・ファンタジー。馬を愛する王女・甘橘(かんきつ)に、剣の腕が立つ美少女・桑折(そうせつ)と、女性キャラが魅力的。
 著者の勝山海百合(かつやま・うみゆり)は、1967年、岩手県生まれ。2006年、「軍馬の帰還」で第四回ビーケーワン怪談大賞受賞。2007年、「竜岩石」で第二回『幽』怪談文学賞短篇部門優秀賞受賞。著書に『竜岩石とただならぬ娘』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『玉工乙女』(早川書房)がある。

 優秀賞の日野俊太郎『吉田キグルマレナイト☆』は、バイトでヒーローショーのスーツアクターをやっていた京大生(推定)が、鞍馬山を本拠とする着ぐるみ劇団に入って舞台に立つ話。吉田山の麓(映画村(吉田スタジオパーク)がオープンしたという無理やりな設定がすばらしい。
 著者の日野俊太郎(ひの・しゅんたろう)は、1977年、東京都八王子市生まれ。京都大学文学部卒。この『吉田キグルマレナイト☆』がデビュー作となる。

 選評(http://www.shinchosha.co.jp/prizes/fantasy/23/selection.html#contentAnchor1)は意外と手厳しいが、ともに一気に読める快作だ。

 選考委員を代表して贈賞式に登壇した萩尾望都は、大賞受賞作について「漢方薬のようにじわじわ効いてくる小説。水墨画のようなシーンが印象に残る」と評し、優秀賞受賞作については、「京都風の育ちのよさが感じられるのに、京都的なトゲがない。プロフィールを拝見したら、滋賀県在住ということで納得した」と笑わせた。

 なお、11月25日(金)19:30〜20:30、ブックファースト新宿店・地下2階にて、今回の受賞者ふたりと、第13回日本ファンタジーノベル大賞受賞者の粕谷知世(新刊『終わり続ける世界のなかで』発売中)をゲストに、「作家になること、書き続けること」(http://www.book1st.net/event_fair/event/page1.html#a_407)と題する大賞決定記念トークショーが開催される(入場無料・先着40名・自由席)。西崎憲、沢村凛、里見蘭など既受賞者も来場予定。ファンタジーノベル大賞ファンはお見逃しなく。

(大森望)







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