“篠山紀信、デビュー” 篠山紀信が語った“3・11以後の表現のあり方”<前編>

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 写真家・篠山紀信氏による最新写真集『ATOKATA』(日経BP社/刊)が刊行された。この『ATOKATA』は、今年3月11日に起きた東日本大震災の被災地を、篠山氏の感性でカメラに収めており、報道写真とは一線を画した仕上がりになっている。

 しかし、3・11以後、篠山氏は表現者として「混乱」していた。そして、実際に被災地で写真を撮影することで、自分の表現の仕方が大きく変わったと語る。
 今回は篠山氏の転換点となるであろう『ATOKATA』の話を中心に、3・11以前と以後の表現の変化について、インタビューを行った。
(新刊JP編集部/金井元貴)


■前編:篠山紀信も戸惑った“被災地の光景”

―この『ATOKATA』は東日本大震災、ここからは「3・11」と呼びますが、その3・11の被災地を篠山さんが撮影された写真集となっています。そこでまず、その3・11が起きたときのお話からお聞きかせいただけないでしょうか。

「ちょうどそのとき、このスタジオにいたんですよ(*インタビューは篠山先生のスタジオで行われた)。ここで写真を選んでいたんだけど、かつて経験したことのない揺れでしたね。ちょうどこのスタジオの下の階に、外国から建築を勉強しに来ている人がたくさんいたのですが、なかなか外国だと地震がないでしょ」

―当時、外国の方々は本当に混乱していたそうですね。

「だから、一斉に外に出てしまって、大変でしたよ。僕自身も外に避難しましたけど」

―3・11が起きてすぐ、徐々に被災地の様子や情報が報道を通じて入ってきましたが、そのときはどのような心境でしたか?

「やはり、オンタイムで見ていたときの怖さはすごかったですね。そして、そうした映像と対峙したときに、写真家として、これを自分のなりの表現で留めておかなくてはいけないということは感じました」

―そして、初めて実際に被災地を訪れたのが5月1日のことだった。

「そうです」

―被災地の光景を見たときの第一印象を覚えていますか?

「地震から50日経っていたんですが、そのときの状況というのは、道路は自衛隊によって片付けられているけれど、建物の瓦礫はそのままでしたね。あとは、廃棄物の仮置き場みたいなものができていました。
ただ、津波の災害の状況はとても不思議なものでね、海の側に行くまでは普通の田舎道が続くんですよ。でも、ある峠を越えた途端にその先が一面瓦礫に覆われているという状態なんです。被害が及んだところとそうでないところ、その境界がはっきりしているんですね。とにかく見たことがない光景で、船が陸に上がっているわ、車が木にぶらさがっているわ、とまるで重力がなくなってしまったような世界なんですよ。1000年に1度の大地震と言われているけれど、これまで写真でも見たことがない光景でしたからびっくりしましたね。
それに、瓦礫だらけの惨状もすごいし、自分の足元を見ると家族の記念写真が泥まみれになって転がっていたりするわけですよ。微視的に見ても、巨視的に見てもすごいので、最初はどう撮影していいのか分からなかったですね。だから、写真家の中には、あまりの光景に撮影できないまま帰ってきたという人もいました」

―それくらい衝撃的な光景だったということですよね。被災地に赴くきっかけはなんだったのでしょうか?

「『日経コンストラクション』という雑誌で『現場紀信』というページを連載しているのですが、その編集部に被災地の写真を撮って欲しいと背中を押されたことですね。普段は、建造物を中心に…例えばスカイツリーとか羽田空港の新しい滑走路とか、実際に現場に行って僕なりの直感で撮影しているのですが、被災地の様子を映像や報道写真を通してみていて、果たして僕自身が被災地で写真が撮れるのか分からなかったんですよ。僕なりに意味を咀嚼して、僕なりの表現ができるのか。行きたいけれど行けなかったんです。そういうときに『日経コンストラクション』編集部に僕なりの感覚で撮って欲しいと言われたので、実際に行ってみることにしたんですよ」

―この写真集には建造物が瓦礫になった写真が多く掲載されています。篠山さんは「自然」をこの写真集のテーマとされていますが、そこにはどのような思いがあるのでしょうか。

「僕自身、いろいろなものを見ていくなかで、自然が自らの自然を破壊して、新しい自然をつくりあげたということだと思ったんですよ。そして、ここにある新しい自然を撮ればいいんじゃないかという気持ちになったんです。それまではどう撮っていいのか分からなかったんだけど、それが分かった瞬間、僕自身の撮り方がはっきりしましたね。
この表紙の写真は、少し前にカメラ雑誌に掲載されたものなんですね。そうしたら撮影場所の現場に住んでいた人から、『私の家は全く壊されて、何もなくなってしまった。とてもわがままな言い方だけど、この写真のプリントを1枚譲ってくれないか』というような手紙がきたんですよ。その人は、自分の今の気持ちを残しておきたいとおっしゃっていて、送って差し上げたんです」

―そんなことがあったのですか。

「そうしたらその方から返事がきて、この辺はもともと埋立地らしいんですが、人間が自然を支配したつもりで住んでいたら自然の一撃によって全部が壊されてしまった。実は人間というのは自然に対して、とてもいい気になってしまっていたんじゃないか。だから、こんな風になってしまったのではないかというような意味のことが書かれていました。
その方は仮設住宅で暮らしているのですが、自分たちの住んでいたところが全部壊されたのにも関わらず、またかつてと同じように家を建てようとしているけれど、それは間違いなのではないかというような感想の手紙を送ってくれたんですよ。僕はその通りだと思いますね。やはり自然に対して畏敬の念を持ちながら付き合っていくべきなんじゃないかな、と」

<中編に続く>

■篠山紀信氏の写真展「KISHIN SHINOYAMA PHOTO EXHIBITION “ATOKATA”」開催
日時:2011年11月22日(火)〜12月15日(木) 10:00〜19:00
会場:Audi Forum Tokyo(東京都渋谷区神宮前6-12-18ジ・アイスバーグ)
特別協賛:アウディ ジャパン
協力:PLAZA CREATE、PHOTO NET
制作:SUNプロデュース
企画:STEP
入場料:無料
詳細は下記のURLにて
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20111116/555499/


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