大人も子どもも共有できる優れた作品に贈られる坪田譲治文学賞。岡山市が1984年に制定した文学賞で、これまでに、江國香織、角田光代、重松清、伊藤たかみらが受賞しています。最新の受賞作は佐川光晴著の『おれのおばさん』。今年5月に亡くなった児玉清氏も選考委員として、この作品を強く推したそうです。このほど、その続編『おれたちの青空』が出版されました。

 舞台は札幌。わけあって親元を離れ児童養護施設で集団生活を送る中学生と、施設を運営する型破りなおばさん、恵子さんとの物語です。問題を抱えた中学生たちが、生きるエネルギーを外へ向かって発散させ、未来へと伸び行くさまを描いているのは前作と同様で、閉塞感が蔓延する今の時代にあって、読む者に新鮮な驚きをもたらしてくれます。

 卓也は幼いころの虐待の記憶に苦しみ、自分の存在自体を消し去りたいと悩む少年。恵子おばさんや施設の仲間との生活で、こんな言葉を口にするまでになります。「おれが生まれてきた理由なんてどうだっていい。生まれてしまえばこっちのもんだ」。

 施設には一人で悩む空間も時間もありません。そばにはいつも誰かがいて笑いあい、時にはけんかに巻き込まれざるをえない環境です。必然的に、誰かと関わり、それによって前向きに一人で生きていく力を見出していた少年。彼を見ていると、後ろばかりを振り返るのはやめて、生きるエネルギーを外へ向かって発散してみよう、そんな気持ちになる人も多いのではないでしょうか。

 表題作のほか全3編で、卓也の物語は『小石のように』に収録されています。



『本好きの児玉清さんも強く支持した坪田譲治文学賞の続編』
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 出版社:集英社
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