海外ツアーのキャンセル料の支払い義務が、現在の旅行開始日30日前(ピーク時40日前)から最大で90日前まで拡大へ――旅行業界を所轄する観光庁主導でそのような見直し案が検討されている。

 どうやら背景には旅行の直前に予約を取り消す“エア旅人”の存在があるようだ。日本旅行業協会によると、海外ツアーのキャンセル率は実に48.6%! そして、その9割近くが、キャンセル料が発生する31日前までに取り消されたものだというのだ。

 大手旅行代理店の社員がドタキャン多発の事情を明かす。「インターネットで気軽に予約するお客さんが増えて、商品をとりあえず押さえておく風潮が強くなりましたよね。例えば、ハワイに行きたいなら3、4社の似通ったツアーを予約して、キャンセル料が発生する直前に、一番条件の良いものだけ残してほかを取り消す。結果、ツアー直前になって大量の空席が出てしまうケースも多くなっています」

 同じ時期、同じ場所、ほぼ同じ内容でも「社によって、相当、価格が違う」(代理店社員)のが実態。よりよい条件のツアーを確保するため、キャンセルありきの多重予約をするのだ。年に数回、海外旅行に行く会社員男性(30代)は自身のツアー申し込み方法をこう説明する。

「旅行に行く半年前、遅くとも3ヵ月前には予約していますが、行きたい国はたくさんあるし、その時点でどこに行きたいか決められない。だから、違う目的地のツアーをいくつか押さえておいて、1ヵ月前になった時点で、どこに行くかを決めています」

 この男性は、こうしたやり方は特殊なことではなく、「旅行好きはみんなやっている」と言う。

 ただ、彼らのような存在の増加がキャンセル率を押し上げているのは間違いない。旅行業者からはこんな悲鳴も聞こえる。

「お客さまがツアーをキャンセルすれば、当然、旅行会社は予約済みのホテルや航空会社にお断りの連絡を入れます。場合によっては、この時にわれわれがキャンセル料を支払わなければならない」(格安専門旅行会社の社員)

 例えば、中国人旅行客の増加などで需要が集中している人気ホテルなどは、キャンセル条件を厳しくする傾向にあるという。

「実際、90日前からキャンセル料が発生するホテルもあり、お客さまのドタキャンで、われわれが割を食うことも。航空券に関しても同様で、お客さまからキャンセル料をいただかなくても、航空会社には支払っているケースはある。ルール違反をされているわけではないのですが、あまりにも取り消しが多いとダメージは大きい」(格安専門旅行会社の社員)

 昨今の旅行を取り巻く環境の変化と旅行業界のルールがそぐわなくなった。今回のルール変更にはそうした事情があるようだ。ここで気になるのは、このまま「90日ルール」が導入された場合、今後の格安ツアー争奪戦にどのような変化があるかだ。

「まず、“とりあえずキープ”が無意味になるので、より多くの消費者が予約を入れやすくなります。また、キャンセル料発生のリスクを恐れ、申し込みは全体的に遅れる。結果、予約が集中する時期はツアー実施日に近くなるのでは」(前出・代理店社員)

 そもそも旅行日直前まで空席が目立てば、航空会社が航空券を大幅に値下げしてたたき売り状態になるのが一般的。そうなると……。

「価格破壊につながることも考えられます」(代理店社員)

 ただでさえ超円高でお値打ちの海外旅行がさらに安くなる? 今回のニュース、今まで海外旅行に縁の薄かった人にとっては朗報なのかもしれない。

(取材・文/コバタカヒト)

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