この“消失”を見破ることができるか?

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 日本ミステリー界の雄、横溝正史の偉業を記念して創設された横溝正史ミステリ大賞。ミステリーの枠を超え、推理小説以外のジャンルにも進出する多彩な作家を輩出していることでも有名だ。それだけに、様々な試みが成されたミステリーを楽しむことができる。
 その横溝正史ミステリ大賞第31回大賞を、選考委員の絶賛とともに受賞したのが『消失グラデーション』(長沢樹/著、角川書店/刊)だ。

 主人公は、高校のバスケ部員・椎名康。椎名は女子バスケ部のエースである網川緑が校舎の屋上から転落する場面に遭遇する。しかしその直後、網川緑の姿は忽然と消えてしまう。椎名は消えた網川を捜索することになるのだが……。

 屋外でありながら密室的な空間で起きた目撃者不在の“消失事件”。ミステリーの舞台設定としてはユニークで魅力的だ。
 さらに、青春本格ミステリーと銘打たれるのも頷けるほど、ミステリーと学園ドラマ、2つの要素を融合させてあるのもこの作品の魅力のひとつだろう。今時の高校生のリアルな人間描写と、周到に練り込まれた謎を見事に平衡させた作品と言えるだろう。

 推理物、探偵物というと、犯罪に関わるトリックをメインに据えてその真相に迫るのが王道だ。しかし、本作は少しばかり毛色が違う。
 登場人物の思いや行動が物語そのものと密接に絡み合い、この作品を単なる探偵ものという枠組みから抜け出させている。逆に言えば、高校生であることや、人物たちの配置、はたまた文章のひとつひとつに至るまでの全てが、まるでパズルのように計算されているのである。
 幾重にも折り重なった真相をあなたは看破することができるだろうか?
(ライター/石橋遊)



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