遺品整理専門サービス「キーパーズ」代表取締役・吉田太一氏写真:吉岡希鼓斗

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 遺品整理の仕事を通して命と向き合い、生きることを知っていく男女を描いた映画『アントキノイノチ』で、2人が働く会社のモデルとなった「キーパーズ」代表取締役の吉田太一氏に取材し、劇中に登場する遺品整理現場のリアリティー、そして近年増加する孤独死の現状が明らかになった。

 出演者の杏平役の岡田将生、ゆき役の榮倉奈々、さらにベテラン社員・佐相役の原田泰造は、撮影前に「キーパーズ」の全面協力を得て役づくりに臨んだという。実際に依頼のあった遺品整理の作業現場に立ち会った3人の印象を、吉田氏はこう語る。「僕自身は同行していませんが、従業員が一緒に作業にあたりました。岡田くんは遺品を分けたり、箱詰めしたりといった作業をしながら、皆の働く姿を熱心に観察していたり、榮倉さんもスタッフに積極的に質問をしていたとか。原田さんは大変、厳しい現場に行かれました。死後何日かたってから故人のご遺体が発見されたケースだったんです。そのことがずいぶん、演技の助けになったとお聞きしました」。実際に原田は、自宅で亡くなった1人暮らしの老人の家を訪れるシーンでその体験を生かしており、「もし行かなければ、あの大変さはわからなかった」と感謝していたという。

 実は映画で描かれている遺品整理の現場のほとんどは、実際に吉田氏自身が遭遇してきたものと何ら変わらない。吉田氏は映画を観た際、あまりのリアリティーに、これまでの思いが重なり、感無量だったとか。「『こんな現場あり得ないよ』という描写は1つもありません。ほとんど自分がやってきたことです。業務内容はもちろん、わたしたちが考えていることまでそのまま表現されていて驚きました」。

 当然、先ほどの原田が訪れた現場のように孤立死のケースも少なくない。(原田演じる)佐相のセリフに「(電化製品を)修理したり捨てたりが面倒になり出したら、孤独死の危険信号だ」とあるが、これはさまざまなケースを見てきた吉田氏の言葉でもある。「人って無意識のうちに(生活の中で)あちこち微調整しながら、生きていると思うんです。けれど孤立死する人の部屋には、その気配がない。部屋は汚れて、布団は敷きっぱなし。きっと誰かとけんかしても仲直りしようとしないから、孤立が深まっていくのでしょう」。そして、「本当に問題なのは孤立死よりも、まだ生きているのに孤立した状態の人々」とも。「誰かが気づかなければ」と話す吉田氏は現在、孤立死を防ぐためのDVDを制作し無償で配布するほか、講演活動などにも力を注いでいる。(文・高山亜紀)

映画『アントキノイノチ』は11月19日より全国公開

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映画『アントキノイノチ』オフィシャルサイト
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