『アントキノイノチ』で人とのつながりの大切さを実感したという岡田将生

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現在22歳。『重力ピエロ』(09)、『告白』『悪人』(いずれも10)と作品を重ねるごとに、日本映画界を面白くする存在へと変貌を遂げている俳優・岡田将生。最新主演作『アントキノイノチ』(11月19日公開)では、高校時代の出来事をきっかけに、人との関わりを閉ざした青年が、遺品整理の仕事を通して命と向き合っていく姿を体現し、新境地を切り開いている。そんな岡田将生に、撮影中のエピソードから、中高時代の思い出まで語ってもらった。

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さだまさしの同名小説を読んで「一気に物語の世界へと引き込まれた」と明かす岡田。彼自身、中高時代はもんもんとしたものを抱えていたという。「僕自身も杏平と同じように学校(や教師)への不満や未来への不安を抱えながら生きてきたし、いじめられた経験もある。毎日、毎日、壁があって、何して良いのかもわからない、そんな生活がすごく嫌で。だから(高校時代の)杏平にも共感したし、そんな彼がトラウマを抱えながらも、周囲の人の助けを借りて前へ前へと歩いていく姿に感動して、僕も(作品の中で)杏平と一緒に変わりたいって思ったんです」。

役へのアプローチは「杏平と歩幅を合わせて歩くこと」。それは彼の「だから今回は岡田将生として見てもらっても全然良いんです」という言葉にも表れている。「監督からも役のことは深く考えずに現場に来てほしいと言われましたし、自分が持っているものは、全部隠さず出したつもりです」。

とはいえ、吃音(言語障害)に、遺品整理業という特殊な職業、さらに心に深い傷を抱えている役どころだけに、大変なシーンも多かったのでは? そんな質問にも茶目っ気たっぷりの笑顔で「全裸とか?」と切り返す。「全裸とかは全然構わないんですけどね。それよりも台本から感じた生々しさが自分に表現できるのかなっていう方が不安でした。でも、現場で動いてみると自然と感情が高まってくるんですね。それに身を任せてるうちに、エネルギーがどんどん自分の中から出てくるから、そのエネルギーに乗っていましたね」。

遺品整理業の仕事を始めた杏平は、先輩社員や榮倉奈々演じるゆきと出会い、交流する中で、少しずつではあるけれども、人と人とのつながりを取り戻していく。岡田自身、榮倉の芝居には何度も刺激を受けたという。高速道路でゆきが杏平にある秘密を打ち明けるシーンでは、「僕の中ではあんなふうに感情が高まるつもりはなかったんですけど、榮倉さんの芝居を見たら、自分(岡田自身)が泣きそうになるぐらい、ゆきちゃんの気持ちがわかって。何かしたい、だけどどうして良いかわからない杏平の気持ちもわかるし。それでも生きているのだから(辛い現実も)受け止めなきゃいけない。そう思ってたら、どんどん自分の芝居も変わっていって。あれは新たな発見だったし、楽しかったなあ」。そう語る岡田の隣で「それが化学反応なんだよね」と瀬々敬久監督がぼそり。監督曰く、岡田は「和製ジョニー・デップ」なのだそうだ。

話は変わって、杏平とゆきの関係について「全く知らない人から大切な人へと変わるって、こういうことなんだなって。(ふたりの関係は)彼女や恋愛を超えた愛の形だと思うんです」と答えた岡田に、“アントキノイノチ”が問いかけたものは何だったのだろうか?と聞くと、「自分の身近な人が突然亡くなったら、今の僕ではとても受け止められないんですけど、だからこそ今というこの時間を大切にしようと思ったし、『ごめんね』『ありがとう』『バイバイ』って、ちゃんと言葉にして伝えないと駄目だなって」と、撮影中、“命”と向き合ったことを教えてくれた。

ちなみに、彼にとっての“アントキノイノチ”は、飼っていたバーニーズ・マウンテンドッグのモモちゃん。「すっごく可愛がっていたので、死んじゃった時は全てを失ったぐらい悲しくて。その時の経験は、自分自身の糧になっていると思います」と話してくれた。その表情からは、モモちゃんが彼にとってどれだけかけがえのない存在だったのかひしひしと伝わってきた。

2012年1月からは大河ドラマ「平清盛」の放送が始まるほか、『宇宙兄弟』(2012年5月公開)に『ひみつのアッコちゃん』(2012年9月公開)と話題作の公開が続々と控えるなど、その躍進はとどまるところを知らない。そんな彼が、身も心も全てさらけ出し、主人公と寄り添い歩んだ『アントキノイノチ』は、先のモントリオール世界映画祭でイノベーションアワードも受賞した注目作だ。その真価は是非ともスクリーンで確かめてもらいたい。【取材・文/大西愛】

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