はじめに

 今回は,前回の記事「統一球はプロ野球をどう変えたのか? ‐得失点差の傾向 前編‐」の後編となっています。なるべく今回から読んでいただく方にもわかるような内容になるよう務めますが,お時間に余裕のある方は前編から見ていただけると助かります。

 今回は後編ということで,前回のデータをもう少し数量的に変化を追えるように分析したものです。分析に使用したデータは,2006年〜2011年のNPB12球団のリーグ戦5166試合,10332チーム分のデータを「プロ野球ヌルデータ置き場」様より参照しています。

得失点差の分析

 前回の分析では,2006年〜2011年の各試合の得失点差を以下の表1のような形で分類しました。

表1




 この表の見方ですが,縦が得点を,横が失点を示しています。得点が1で失点が0の欄には1.44%とありますが,これは,1対0で終わった試合が全チームの1.44%を占めていることを占めています。

 前編ではこのような感じで2006年から2011年までのデータを1年ごとに眺めたわけですが,今回はもう少し年度間での推移を数量的に捉えて行きたいと思います。

得失点差を分類

 表1には10×10のデータがあります。これら全てのデータの推移を見るには数が多すぎますので,10×10のデータを6つのグループに分類しました。まずは表2を御覧ください。グループごとに色分けしています。

表2

◆:赤色    得点が0〜2点以内で,得失点差が1〜2点だったチーム
◆:オレンジ  得点が3〜5点以内で,得失点差が1〜2点だったチーム
◆:黄色   得点が6点以上で,得失点差が1〜2点だったチーム

◆:緑色    得点が3〜5点以内で,得失点差が3〜4点だったチーム
◆:黄緑色   得点が6点以上で,得失点差が3〜4点だったチーム
◆:水色    得点差が5点以上ついたチーム

 これらの6つのグループの割合を2006年から2011年までの6年間のデータを求めてみました。

得失点差の推移

 2006年から2011年までの6年間の得失点差の推移のデータを表3に示します。

表3

 このデータをグラフ化したものを図1に示します。

図1

 2011年以前は大体同じような傾向で推移していたものが,2011年になって大きく変化していることがわかると思います。顕著な例をあげますと,

 (1)得点が0〜2点以内で,得失点差が1〜2点だったチーム数が増加

 (2)得点が3〜5点以内で,得失点差が3〜4点だったチーム数が増加

 (3)得点差が5点以上ついたチーム数が減少

 という傾向が見て取れます。大差のついた試合が減少した分,?や?の試合数が増加したと考えられます。

 プロ野球は基本的にコールドゲームがありませんので,大差の試合であっても9回までやらなければなりません。そのため,大差がつくことで時間がかかってしまいプロ野球中継が延長してしまう場合があります。接戦であれば延長も仕方がないと思えるところもあるのですが,大差がついて延長するようなケースは,正直結果が半分見えているところもあり,延長しなくてもいいじゃないと思ってしまいます。特にプロ野球中継の後の番組を楽しみにしている人には殊更そう感じられるのではないでしょうか。

 贔屓のチームが大勝しているのであれば,安心してみることができますが,やはり拮抗した展開の試合の方が魅力のあるコンテンツであると思います。統一球の導入によって大差の試合が減っているということはプロ野球にとってはプラスに作用しているといえるのではないでしょうか。

リーグごとに比較

 最後におまけとして得失点差の推移をリーグ別に分析したものを示します。まずは,セ・リーグのデータを表4-1に示します。

表4-1

 このデータをグラフ化したものを図2-1に示します。

図2-1

 次に,パ・リーグのデータを表4-2に示します。

表4-2

 このデータをグラフ化したものを図2-2に示します。

図2-2

 図の2-1と図の2-2を比較してもらうと,リーグ間によって得失点差の推移が異なることがわかります。

 と,いっても2011年の割合は表4-1と表4-2を見てもらえるとわかりますが,そんなに差はありません。違いがあるのは2010年以前の方だったのですが,2011年になると両リーグとも同じような得失点差の内容になったといえます。

 このような変化がなぜ起こったのか,2011年は偶然の一致に過ぎないのか,それとも何か意味のある変化なのかはこのデータからではわかりません。これを読んでくださっている皆様は何が原因だと思われますか?良ければご意見など聞かせてもらえると助かります。


おわりに

 以上,得失点差の分析でした。

 これで土台ができたという感じです。この分析をテンプレートに各チームの分析などしていけたらと考えています。全チームの分析を掲載するかどうかは微妙なところですが,興味あるチームから分析して行こうと思います。リクエストもあれば受け付けます。

 個人的には,ソフトバンクと横浜が気になっています。良い意味と悪い意味で両リーグを独走したこの2チームの得失点の傾向をまずは調べようかなと思っています。

 さて,スポーツニュースなどでは主に得点力の低下など,ネガティブな影響が語られることが多い2011年のプロ野球ですが,大差がつく試合展開が減るなどポジティブな面もあるようです。

 メディアはそういうところまでは追求して紹介してくれないと嘆くのは簡単ですが,これはメディアを責めるよりも,自分の長所をアピールできていないNPBの問題ではないかと個人的には思っています。

 では,今日はこの辺りで失礼します。

データ引用&参考サイト

 ・プロ野球ヌルデータ置き場

 いつもお世話になっています。