ブロッコリーは、鮮度とゆで加減が命です。

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今では定番野菜のブロッコリー。だが、昔はブロッコリーよりもカリフラワーのほうが、家庭の食卓でおなじみだった気がする。

両者の逆転は、なぜ起こったのか。全国で第一号の野菜ソムリエで、日本野菜ソムリエ協会講師も務める、『干し野菜手帖』『野菜ソムリエKAORUの野菜たっぷりサンドイッチレシピ』(誠文堂新光社)の著者・KAORUさんに聞いた。

「もともと食用として日本で広まったのは、ブロッコリーよりもカリフラワーのほうが先でした。でも、植物学的にはどちらもキャベツの変種であり、先にブロッコリーを育てていて、そこから突然変異で白くなり、栽培できるように改良を重ねて作ったものがカリフラワーなんですよ」

日本に最初に入ってきた時期は、どちらも明治初期。政府の政策により、海外のものを取り入れる動きの中で取り入れられたが、当時はまだ広まらず、洋風文化・洋食文化の広まりとともに、一気に浸透したそうだ。
「日本では当時、煮物やきんぴら、漬物などで野菜を食べていましたが、洋食文化によって『サラダ』という食べ方が広まるなかで、“白い野菜”がもてはやされました。当時は栄養より、海外の文化を取り入れることがステイタスでしたので、サラダに欠かせないものとして白いカリフラワーが受け入れられ、日本でも作られるようになったようです」

農林水産省統計情報部「青果物卸売市場調査報告」〜「卸売市場における野菜卸売数量の推移」によると、昭和50年にはカリフラワーが76000トン、ブロッコリーはまだ品目区分がなかった。
だが、昭和60年では、カリフラワー75000トン、ブロッコリー55000トンとブロッコリーが大きな伸びを見せ、平成2年にはカリフラワーが49000トン、ブロッコリーが93000トンと、約2倍までに逆転している。
「アメリカではブロッコリーが『健康に良い野菜』と位置付けられていたことから、日本でも広く使われるようになりました。同時に、『緑黄色野菜を食べよう』という考え方が広まったこともあります」

加えて、黄ばみやすく汚れが目立ちやすいカリフラワーに比べ、ブロッコリーのほうが流通で色が変わりにくいこと、栽培に手間がかからないことも理由として考えられるよう。
「また、ブロッコリーがポピュラーになった理由には、『食べ方』が広まったこともあると思います。今でこそ様々な食べ方がありますが、やっぱり一番メジャーなのは、茹でてマヨネーズをつける食べ方。それを広めたマヨネーズメーカーの動きがなければ、ここまでポピュラーになってはいないのでは?」

平成20年には、カリフラワーが23000トン、ブロッコリーが145000トンと、約7倍にもなり、大きく差がついた状態だ。
「ただ、生の場合は、ブロッコリーのほうがビタミンCが多いということはありますが、茹でた時にビタミンが損なわれにくいのはカリフラワーのほうで、茹でるとどちらも同じくらいになります。また、カロテンはブロッコリーのほうが多く、ビタミンB群や鉄、カルシウムなどはブロッコリーのほうがやや多めではあります」

ちなみに、どちらも日持ちはしないため、買ってきたらすぐに茹でて、残りは冷凍保存するのがオススメ。また、冷蔵保存するときは、ラップで包む、あるいは湿らせたペーパータオルで乾燥を防ぐように覆い、さらにラップで包んで、蕾を上にむけて入れるのが良いそうだ。

茹でたり蒸したり、グラタンやオーブン焼き・シチューやカレーに入れても美味しい両者。カリフラワーのほうは、鮮度が良ければ、生のままスライスして食べたり、生のままピクルスにするのもオススメだとか。

旬は、いずれも冬。美味しく食べたいです。
(田幸和歌子)