国内でのカジノ解禁に向けた動きが活発化している。民主、自民、公明などの超党派の国会議員で作る「国際観光産業振興議員連盟」(会長・古賀一成衆院議員)が昨年4月、カジノ法制化に向けて発足、このほど「カジノ区域整備推進法案」の原案をまとめ、今臨時国会への法案提出を検討している。

景気刺激の起爆剤として期待され、特に収益を東日本大震災からの復興財源とするというが、世論のアレルギーは強く、おいそれと実現はしないようだ。

収益の一部は震災の復興財源に

カジノの「効用」は、カジノを核にホテル、ショッピングセンター、コンベンションセンターなど総合的なリゾート施設を整備し、海外を含めた客を呼び込み、地域経済を活性化する、というものだ。

議連がまとめた原案によると、国は地方自治体の申請に基づき、カジノ区域を指定。民間事業者に対する認可や犯罪監視を行う「カジノ管理委員会」を内閣府の外局として設置する。また、カジノで得られた収益の一部は国や自治体が納付金として徴収し、東日本大震災の復興財源にも充てるとしている。詳細を詰めた実施法を制定し、実際にカジノが開設されるのは2年以上先と見込んでいる。議連関係者は「税金を使わずに、カジノを核として国内外から投資と人を呼び込めば、復興財源確保と雇用創出の一石二鳥の効果が見込める」と説明する。

国土交通省の成長戦略に関する報告書でも、観光立国に向け、カジノを含む総合リゾート開発の潜在力を検討することをうたっているが、政府としての検討はまだ緒に就いたばかりだ。

関西では橋下氏が熱心だった

これまでの議論では、沖縄振興の一環で、沖縄へのカジノ誘致論があるほか、東京都の石原慎太郎知事がお台場への誘致に意欲を見せた。関西圏では大阪府の橋下徹前知事の提唱で、関西広域連合(関西の奈良を除く5府県と鳥取、徳島県で構成)が9月24日、カジノを含む統合型リゾート誘致の検討会を設置することを決めた。九州でも、長崎県佐世保市の大型リゾート施設「ハウステンボス」(HTB)へのカジノ誘致を目指す官民一体の運動も起きていて、手始めに、HTB子会社が運行する長崎―上海間の国際フェリーでの解禁に意欲を燃やしている。さらに、東日本大震災の津波で大被害を受けた宮城県名取市の住民らから、カジノ招致を盛り込んだ提言が出されている。

このうち関西広域連合では、各知事間の意見の隔たりが大きく、嘉田由紀子・滋賀県知事が、ギャンブル依存症などのマイナス面を指摘、広域連合長を務める井戸敏三・兵庫県知事も「依存症や教育への影響、カジノ運営の透明性など慎重に検討すべきだ」と慎重姿勢。これに対し、橋下氏は、自身が率いる大阪維新の会が、大阪府知事選(27日投開票)で掲げる公約(マニフェスト)に、カジノを含む統合型リゾート施設の立地促進を盛り込むなど、熱心だ。

「まず東北に」という声も

議連は当面2カ所、最大10カ所を段階的に進める方針という。関係者は「交通アクセスや立地に恵まれた東京・お台場、米軍基地の負担軽減や振興策として沖縄県などが有力だったが、震災で、まず東北にという声も強まっている」という。

もちろん、カジノ合法化への世の抵抗感は強い。議連などの動きを積極的に伝えているのは「産経」だけで、他の主要紙は、地域の動きなどを地方版中心にこじんまりと報じる程度。治安の悪化、闇社会とのつながりなどへの懸念はもちろん、「競馬、競輪、競艇の公営ギャンブルが軒並み赤字の中で、カジノが期待されるような収益を上がられるかは疑問」(経済官庁幹部)との指摘もある。折しも、大王製紙の御曹司が会社から100億円を借りてカジノにつぎ込んだとされる事件が発覚、カジノ開設への逆風も強まっている。