ブラッド・ピット (撮影:南樹里)
11月10日、映画『マネーボール』の来日記者会見が、グランドハイアット東京にて行われ、主演と製作を務めるブラッド・ピットが「非常に誇りに思っている作品」と述べるなど同作の魅力を語った。ハリウッドの超大物スターが久しぶりに来日し、前夜のジャパンプレミアも盛り上がったが、この会見にもスチールカメラマン100名、記者300名、ムービー20台が集結。この日、花束贈呈ゲストには女優の吹石一恵が登場。彼女の父親が元プロ野球選手ということで「(お父さんが作品を見たら)感想を教えてほしい」とブラッドは語りかけた。

今回は家族8人揃って来日したブラッド。「家族を持ったことは僕に変化をもたらしました。日々が戦いであり、挑戦の場。家族の元に戻ると、ホッと一息付けるので、とても貴重な存在です」と、穏やかな表情で語った。また、野球にはつきものである“ジンクス”に話題が及ぶと、「ひとりで飛行機に乗る場合は、家族の物を何か持って乗るようにしています。それが僕のジンクスです」と明かした。

実話を基に映像化した本作は、野球が題材になっているものの、試写を見た観客からは“野球に興味がないけれどとても面白かった”という声が多く。またハリウッドでも作品にならって「ホームラン級」の出来栄えと評価されるなど、アカデミー賞作品賞の呼び声が高い。ブラッドは「僕もあまり野球を知らないで、この作品をつくりました」と前置きし、「野球は映画の背景。これは正義の話であり、負け犬というレッテルをはることや、失敗や成功といった価値観は正しいのかどうか、そういうことを問う映画」だと述べた。そして現代の若者たちに対し「常識に疑問を持つことが大事。問題がある場合は、その解決策を見出すことが一番大切だと思います」とメッセージを送った。

なおかつ「(ブラッドが演じた主人公の)ビリーは、同じ土俵で公平に戦って、勝利したいのです。財源力に差があるチームが戦うことは不公平だと。そこからビリーは、いかに勝つかを考え始めます。約150年間続いた球界のルールや旧来のスカウト方法が今通用するのか? 成功と敗北は何で決まるのか? を突き詰めていきます。そして数字によって、今まで価値がないとされていた人材に価値を見出して発掘していくのです」と一気に語り、自身の発言が長い事を通訳に詫びる場面もあった。ブラッドがこれほど熱弁するには訳がある。彼が本企画に携わってから完成まで、約4年間を必要としたからだ。その背景には制作をあきらめなかった同作のプロデューサーの存在があってこそだと、公の場で改めて感謝の言葉を伝えたほど。

そして拝金主義がはびこる世の中において、「敗北から学んでこそ次の成功に繋がる。続いていることが重要であり、その続いているという観点が欠けているのが、今の我々の価値観の欠点だと思う。ビリーが求めている勝利は、新聞の見出しになるようなものではなく、自分自身の“私的な勝利”。そこに僕は非常に尊敬し敬意を表します」と主張した。

そんなブラッドは、東日本大震災の被災者へのお見舞いの言葉と、「一生懸命に復興している姿からインスピレーションを受けています。僕は世界中のいろいろな場所に行きますが、世界中で日本の粘り強さについての話を聞きます。絶対、忘れていません。皆さんの生きる力、復興にかける思いにとても影響されています」とエールを送り、会見の最後を締めくくった。

■作品情報
『マネーボール』

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