“豪華客船”のホスピタリティの秘密とは―幡野保裕さんインタビュー(1)

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 豪華客船として名高い「飛鳥」「飛鳥II」、そして最高級のおもてなしで高いリピーター率を誇る「飛鳥クルーズ」。100日の世界一周の船旅を行う「世界一周クルーズ」はなんと最低価格425万円という超豪華なクルーズですが、そんな「飛鳥クルーズ」の5代目船長である幡野保裕さんが上梓された『リピート率7割の「飛鳥クルーズ」最高級のおもてなし』(かんき出版/刊)には、「飛鳥クルーズ」のホスピタリティについて詳細につづられています。
 どうしてここまでリピーター率が高いのか? 実際に船の中はどのようになっているのか? 著者の幡野さんのお話を3回に分けてお送りします。前編ではリピーター客に満足してもらう方法についてお話を聞いています。


■前編「リピーター客にご満足していただく秘訣とは?」


―今回は『リピート率7割の「飛鳥クルーズ」最高級のおもてなし』について、お話をお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いします。まずは、「飛鳥クルーズ」についてお話をお聞きしたいのですが、すごく豪華な客船ですね! 一度乗ってみたいと思いました。

「ぜひ、乗ってみてください(笑)」

―「飛鳥クルーズ」に参加される方はどのような方が多いのでしょうか?

「長期間のクルーズには時間が必要ですから、例えば海外に行くようなクルーズになりますと、平均年齢が70歳近くになりますね。第一線を退かれて、ゆっくりと楽しみたいという方が多いと思います。
ただし、クルーズは長期のものだけでなく、夏になると東京や横浜を中心としたクルーズもありますし、阿波踊りや熊野花火といったお祭りを訪ねる短期のクルーズもあります。そういうクルーズには若い方もいらっしゃいますし、ご家族連れの方もいらっしゃいます。あとはこれからですとクリスマスですね。船の中をクリスマス一色にして、食事やショーなどをクリスマス仕立てにする、と。クルーズも2泊3日、あるはワンナイトもあるので、我々としては幅広い年齢層の方々に乗っていただきたいという想いがあります」

―6月や秋のシーズンですと、新婚旅行などで参加される方もいらっしゃいますよね。

「そうですね。船の上で結婚式を挙げられて、そのまま結婚旅行に行かれるカップルもいらっしゃいます。そのときは船長が立会人になりまして、いわゆる人前結婚式みたいな形ですが、結婚式が船の中の1つのエンターテインメントのようになります」

―タイトルにもあるように、「飛鳥クルーズ」はリピーター率が非常に高いということなのですが、リピーター率が高い理由をどのように分析されていますか?

「船は他の乗り物と比べて特殊でして、運命共同体で旅をしているという意識が強いと思うんですね。だから、船に乗っていると人間同士の距離感がものすごく近く感じられます。24時間一緒にいるわけですから、必然的にお客様同士のコミュニケーションが活発になります。そうやって居心地の良い空間が作られていきます。また、クルーとお客さまという関係も重要です。その2つの人間構成の中で、気持ちよく過ごせるので、ロングクルーズを終えてしばらく経つと、あの雰囲気をまた味わいたいということで戻ってこられる方が多いように思いますね」

―旅をしている中で、クルーズ友達が出来たりするんですね。

「特に世界一周クルーズでは北海道から九州まで様々な地域からお客様がいらっしゃるので、クルーズを終えたあとも“同窓会”というと変な言い方になってしまいますが、年に1度集まるというようなことがあるようです。ときどき、船長さんも顔を出してくださいといわれます(笑)」

―幡野さんご自身においては、「飛鳥クルーズ」のどの部分が一番お好きですか?

「私自身は、もともと船乗りですから、基本的に船が好きなんです。特に客船は観光なので普通の船では行けないような寄港地、魅力のある港に行けるところがいいですね。実は、客船ほど忙しい船はなくて、ほとんど毎日港に出入りしているようなものなので、船を動かすという面ではとても密度の高い時間を送れます。着岸も離岸も全部自分で操船しますからね。あとは、やはりたくさんの人と知り合いになれるということは、自分にとっての財産になります」

―多くのリピーター客がいらっしゃる中で、リピーター客を飽きさせないために、どのような工夫をされていますか?

「クルーズの寄港地を選ぶというのも1つですね。1回1回寄港地を選ぶんです。また、船の中で提供する食事も一つのエンターテインメントですので、工夫を凝らしています。あと、リピーターになっていただくためには、お客さまとどれだけ親しくなれるかということが大事です。私たちは出会いを大切に考えていて、もちろんサービスをさせていただくほうと、サービスを受ける方は差があって然るべきなのですが、船という生活空間が、人と人の関係にいい影響を与えてくれるので、そこでどれだけお客様と通じ合えるか、そこがリピーターを作る大きなポイントだと思いますね」

―本書の中で印象的だったのが、「あのクルーにまた会いたいと思ってもらうために」という言葉でした。飛鳥IIに乗ったことがない方は、飛鳥クルーズの内容や行くところに魅力を感じると思うのですが、乗った人は「またあの人のサービスを受けたい」という、そこで働く人に対して魅力を感じていらっしゃるというところで、そこで働く人間が大事だと思ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

「いろいろな部分でそれを感じましたね。もともと、日本郵船が飛鳥を動かす30年くらい前に氷川丸が最後の客船として運航してサービスをしていたんですが、それから長い間経っていました。だから、経験者もほとんどいない状態で新しくスタートしたので、勉強しながら客船を運航してきました。その中で、クルーとお客さまが心を開いてお話をできるようになるのは、その人が持っている人間力といいますか、人の魅力みたいなものがすごく大事だなと気づきました。やはりお客さまと一緒に旅をするようになって、そういう風に感じましたね」

―最初の頃は試行錯誤していらっしゃったのですね。

「そうですね。もともと船乗りのほとんどは接客サービスと無縁ですから(笑)デスクワークも得意ではありませんし」

―船乗りというと男くさい世界というイメージがありますが…。

「男くさいというか、泥臭いというか(笑)。それまで乗っていた船は、女性は一人も乗っていませんでしたから。初めて客船に乗ったときはビックリしました」

―船の中の雰囲気について教えていただけますか?

「いろいろなクルーズがありますが、提供させていただくエンターテイメントやお食事はしっかりとコーディネートされていて、クルーたちも一人ひとり教育されていますので、クルーズのクオリティはどれも一緒だと思います。
ただ、クルーズの中には私たちが決められない要素というのもありまして、その1つが天候ですね。天気が良いと70%くらいはクルーズ成功という感じがあります。もう1つ選べないものがお客さま同士がどれだけ上手に付き合われるか、ですね。それは大きなポイントなんですよ。他のお客さまにとってよい脇役でいることがとても大切です。ご迷惑をおかけしてしまう方も中にはいらっしゃいますが、クルーズに乗ってこられるほとんどのお客さまは、乗った途端からお互いの距離が近くなって、さらにクルーたちの笑顔にも影響されて、よいお客さまになられますよ」

―やはり、クルーの方々の笑顔や表情が大切なんですね。

「雰囲気作りにはとても重要ですね。でも、船内にはいろいろなお客さまがいらっしゃいます。船の中ではいつもペアルックで一緒の場所にいらっしゃる夫婦もいらっしゃれば、夜、寝るときだけ同じ部屋にいるという夫婦も。堅苦しい雰囲気はなく、みなさんそれぞれのスタイルで楽しんでいらっしゃいますね」

■中編「飛鳥のホスピタリティの源泉とは?」に続く



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