過去の企業買収をめぐって経営が混乱している光学機器メーカーのオリンパスは2011年11月8日、買収時に支払った多額の報酬や買収資金が、同社の証券投資の損失を隠すために使われていたと発表。100人を超す報道陣を前に、高山修一社長は時おり涙ぐみながら、「申し訳ない」と頭を下げた。

含み損を抱えた運用資産を、複数のファンドを使って操作し、約20年にわたって本来決算に反映すべきだった損失の計上を回避してきた。この穴埋めのため、企業買収を「隠れ蓑」に多額の資金を流用したとみられる。過去の決算が粉飾された可能性が指摘されていて、そうなれば上場廃止もあり得る。

「数字はまだ答えることできない」

オリンパスは11月8日の取締役会で、森久志取締役副社長執行役員を副社長執行役員から解職した。前夜、森氏が高山社長に「損失隠し」への関与を認めたからだ。山田秀雄常勤監査役も辞任の意向を表明した。

高山社長は記者会見で、森氏の心変わりを「第三者委員会でいろいろ話しているうちに(隠せないと)思ったようだ」と話した。

ただ、具体的な損失額などについては、「1990年代ということはわかったが、昨日の段階では、第三者委員会にすべての資料は提示できていない。数字はまだ答えることはできないし、(第三者委員会の調査中に)わたしがいろいろと話すと迷惑がかかるので、結論を待って報告したい」と、口をつぐんだ。

そのうえで、高山社長は「損失隠し」の責任者について、「現時点では菊川剛氏(前会長兼社長)、森久志氏、山田秀雄氏の3人だ」とし、またそれ以前の経営者の関与も示唆した。

菊川氏の処遇については、「菊川氏は解職した。会社には来ていて、第三者委員会の調査にも協力している。今後は損失先送りの詳しい内容も判明するし、その時点で改めて責任者の処分があるかもしれない」と話した。

また、菊川氏が違法性を認識していたと思うか、聞かれると「菊川氏は『今まで隠していて申し訳ない』と語っていた」と話した。

責任者である3人の刑事告発は、「必要があれば考える」という。

高山社長「わたしはオリンパスが好きだ!」

「粉飾決算ではないか」との指摘に、「大変、不適切な(会計)処理をしたのは事実」とだけ答えた。買収をめぐってはこれまで「適正」と主張していたが、「昨晩まで知らなかった。事情が変わった」と、結果的にウソになったことを認めた。

上場廃止の可能性に話が及ぶと、「そうならないように全力を挙げて努力していく。わたしはオリンパスが好きだし、4万人以上の社員や、消費者や株主に対して、オリンパスの事業価値を提供し続けることがわたしの責務だ」と答えた。

さらに、報道陣が「今回の問題はウッドフォード氏(元社長)が過去の買収を問題視したことによって明るみになったが、それがなければわからなかったのではないか」と質すと、「必ずしもそうではない。監査などでわかった可能性はある」と答え、「20年もわからなかったことが、いまの取締役や監査役でわかるというのか」と、失笑を買う場面もあった。

ウッドフォード氏の社長解職については、「本人の資質の問題」とし、「評価(解職)が変わることはない」と断言した。