果たして、「タカセ」と名乗った犯人は誰なのか。考えられる筋は3つある。
 一つ目は、やっかみ説だ。いよいよ理事選が3カ月後の来年初場所後に迫り、早くも10月14日には立浪一門が一門会を開くなど、それぞれの一門、グループは候補者の調整、絞り込みに入っている。
 春日野親方が属する出羽海一門の理事枠は3人。そのうちの一人、前理事長の武蔵川理事(元横綱三重ノ海)は定年に引っかかるため、勇退することが決まっている。この後釜に名門・春日野部屋の総帥である春日野親方の名前が挙がっているのだ。といっても、万人が、もろ手を挙げて、というワケではないのが実情だ。
 「春日野親方が先輩の親方たちを押しのけるかたちで先代の跡を継いだのは8年前。このときのいざこざで、千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)は部屋を飛び出して分家独立しています。49歳と若いこともあって、理事就任は時期尚早、という声もあちこちから聞こえてくる。そんな春日野親方の理事出馬を快く思っていない人たちが、この暴行事件をうまく利用してやろうと画策した可能性はある」(部屋関係者)

 2つ目は八つ当たり説だ。今年2月に発覚し、大相撲界を揺るがした八百長問題では、25人にも及ぶ親方や力士たちが解雇や引退勧告を受け、大相撲界を去っていった。その震源地となったのは、春日野親方の弟子だった元幕内・春日錦の証言だった。
 「中には、春日錦の一方的な証言だけで処分されるのは納得できないとして、いまも裁判で争っている者もいる。おそらく多くの者が春日錦の所属していた春日野部屋のことをおもしろく思っていないでしょう。そんな彼らが今度の事件を知ったらどう思うか。バラしてしまえ、と思う者がいてもおかしくない」(協会関係者)

 3つ目はゲリラ説。大相撲界はいま、来年11月の公益法人申請に向け、年寄株をどう扱うか、調整を続けている。春日野親方はその中核的な存在の公益法人制度改革委員会の有力メンバーだ。
 「協会サイドは、年寄株を一括管理し、その代わり一定の金額を支払うという案を提示しているが、これに反対する親方たちは多い。そのため、委員たちをゲリラ的に攻撃し、改革委員会そのものを混乱させてしまおうと考える者がいるかも。春日野親方はその最初のターゲットになった」(一門関係者)

 いずれにしても、春日野親方が多くの敵を抱えているのは確か。ただ、このまま泣き寝入りするつもりはなく、「誰がやったか、大体の目星はついている。証拠を集めているところだ」と反撃を予告している。
 この陰湿な密告騒動は、まだまだ終わりそうにない。