殺処分のガス室生き残った犬、“2度目のチャンス”に引き取り希望殺到。

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家族に愛され、人間と一緒に幸せに生活を送るさまざまなペットがいる一方で、いろいろな事情により人の手を離れる動物たちが数多く存在している。保護施設では、収容から一定期間が過ぎた犬や猫などの殺処分を行い続けなくてはならない悲しい現実があるが、先日、米国ではガス室での処分を免れた1匹の犬が話題となり、注目を集めた。現在、この犬を引き取って世話をしている愛護団体には、これまでに100人ほどの引き取り希望が寄せられているそうだ。

10月3日、アラバマ州フローレンスにある動物保護施設では「過密状態」(米放送局ABCより)という問題もあり、18匹の犬に殺処分が行われた。この施設では、部屋に一酸化炭素を注入することで窒息させる方法を実施。これにより動物たちは数分で意識を失った後、死に至るという。ところがこの日、施設では1匹の犬に奇跡が生まれた。

責任者がガス室に入って確認しようとすると、ほかの犬がすべて息絶えた中、1匹のビーグル犬だけが「尾を振ってドアの前で待っていた」(ABCより)という。これまで数多く処分を経験してきた責任者が「珍しい」(NBCニューヨークより)と語るほど、滅多にない生還を果たしたビーグル犬。この施設では、処分を免れた犬には「2度目のチャンスを与える」方針のため、獣医の検査を受けて健康に問題がないとお墨付きをもらった上で、話を知って世話を希望した「いくつかの慈善団体」(ABCより)の中から選ばれた、ニュージャージー州の愛護団体「Eleventh Hour Rescue」へと引き取られた。

「Eleventh Hour Rescue」の公式サイトによると、“ダニエル”と名付けられたビーグル犬は体重の不足だけが懸念されているものの、ほかは至って健康で、元気に生活しているそう。そして、米国内でダニエルの存在が大きく報道されると、愛護団体のもとには引き取りを希望する問い合わせが殺到。地元紙が報道した直後には、1時間に「200通以上の電子メール」を受け取ったといい、未だダニエルの問い合わせは後を絶たないという。

こうした反応に、「Eleventh Hour Rescue」のリンダ・シラーさんは、ダニエルを通じて保護施設へ収容された動物たちに世間の目を向けさせると同時に、「ガス室での殺処分に反対する機運を高めたい」(NBCニューヨークより)とコメント。米国では、ニューヨーク州やニュージャージー州など多くの州ですでにガスでの殺処分が禁じられているが、来年度から禁止されるアラバマ州を始め、まだガスを使用する州も残っているそうだ。

また、殺処分がどんな方法であれ、600万から800万もの動物が毎年保護施設へと収容され、そのうち400万匹が安楽死処分になっているのが米国の現実。そのため、今回ダニエルの引き取りを希望する人が多く現れたことに対し、シラーさんは「ダニエルがダメでも、私たちやほかの施設から別のペットを引き取れますよ」と、1匹でも多くの動物が命を繋げるよう期待している。