京大ミステリ研ウ×コ事件、最終解決!?

 今を去ること30数年。京都大学推理小説研究会のボックス(部室)で、謎の怪事件が発生した。本棚に並んだ本の上に、何者かの人糞が載せられていたのである。本のてっぺんとその上の棚板とのあいだには数センチの隙間しかない。いったい誰が、どうやって、なんのために、本棚の中の本にウ×コを載せたのか?
 これが世に言う"京大ミステリ研ウ×コ事件"。竹本健治の実名ミステリ『ウロボロスの基礎論』の中で詳細に語られたことで、一躍、ミステリ好きのあいだで有名になった、ウソみたいなホントの事件である。

 発生から30数年ぶりに、この事件の謎に挑んだのが、間もなく文春文庫から刊行される乾くるみの『嫉妬事件』。
 時代を1984年の暮れに設定、舞台を東京の(架空の)城林大学ミステリ研究会に置き換えているものの、"ウ×コ事件"そのもののディテールは、ほぼ史実(?)に基づいている。
 部室に集まったミステリ研のメンバーたちがそれぞれ仮説を披露し、徐々に事件の真相へと近づいていく、正統派ストロングスタイルの本格ミステリだ。
 最大のポイントは犯行動機。いろんな意味で、じつに乾くるみ作品らしい、驚くべき真相が読者の脳天を直撃する。

 そのリアリティは、京大ミステリ研出身の我孫子武丸が"「真相はこれだってことでいいです」と言いたくなるくらい"(巻末解説より)と評しているほど。
「京大ミステリ研ウ×コ事件」を知る人も知らない人も、ぜひ驚愕の謎解きを体験してほしい。

 なお、この「嫉妬事件」は、2010年11月に出た〈オール讀物別冊 オールスイリ〉に一挙掲載されたもの。初の書籍化となる今回の文春文庫版には、書き下ろしの短編「三つの質疑」が併録されている。これは、『嫉妬事件』の作中に登場する、ミステリ研メンバーが書いた犯人当て小説という設定。こっちのほうも、実にそれらしい作品に仕上がっている。

(大森望)







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